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2024年08月20日
COLUMN

IPOにおけるコンプライアンスの重要性と強化策

2024年8月20日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、コンプライアンスの強化は非常に重要です。
上場審査において重要なのは言うまでもありませんが、上場後の企業の信頼性や持続的な成長を確保するためにも、法令やルールを順守する姿勢は欠かせません。

上場準備企業にとって、株式公開を目指す過程で様々な課題を解決する必要がありますが、その中でも、万が一法令違反が起きてしまった場合、大きな課題となってしまいます。

本コラムでは、そんなIPOに向けたコンプライアンス強化策について詳しく解説します。

2.コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、法令順守と捉えられているケースが多いのではないでしょうか。
これは間違いではないのですが、広義には法令だけではなく、規則、内部規定、倫理に従うことや、社会的責任を果たすことまで求められています。
特に上場企業においては、これら広義のコンプライアンスが求められており、近年その傾向は強くなっています。

3.IPOにおけるコンプライアンス体制強化の重要性

コンプライアンスの重要性が提起されるようになって久しいですが、その根幹にあるのは、コンプライアンスに対する社会的な意識の高まりにあると思われます。それに比例して、コンプライアンス違反のペナルティは大きくなっており、甘い認識では手痛いしっぺ返しをくらうことになってしまいます。
法令順守はどの企業でも求められるものではありますが、特に、パブリックカンパニーである上場企業にとって、コンプライアンス違反は企業存続に関わるような致命的な問題を引き起こす可能性があるのです。

4.コンプライアンス違反によるリスク

(1)IPOプロセスへの影響

コンプライアンス違反が発覚すると、IPOプロセスが遅延するだけでなく、最悪の場合、上場自体が中止となる可能性すらあります。
法令違反は上場審査や監査においても、非常に重要視されることは言うまでもありませんが、その調査や再発防止策を講じるのにも多大な労力を要します。コンプライアンスに関する問題は、起きてから対処するのではなく、事前に防止することが何よりも大切なのです。

(2)企業価値への悪影響

近年、企業には高いコンプライアンス意識が求められています。
過去、利益を重視した経営が行われていた風潮があったかもしれませんが、最近ではコンプライアンス違反に対するペナルティは非常に大きいものがあり、決して無視できるものではありません。
今、問題が起きていないからという理由でコンプライアンスを軽視するのは、非常に危険であると言わざるを得ないでしょう。

5.具体的なコンプライアンス強化策

(1)社内教育

まずは何よりも、従業員に対するコンプライアンス意識を高めることが大切です。
経営者や責任者からコンプライアンス重視の姿勢や考えを発信しなければなりません。
多くの不祥事は、「これまでこうしていたから」、「このくらいは問題ない」というこれまでの現場の風土から生まれます。これらの風土や雰囲気は、経営者や上席者の姿勢に大きく影響を受けるのです。

また、定期的な研修や講習を通じて、法令遵守の意識を組織全体で高めることも有効です。
ただ、これらの研修などを行って満足していまっているケースが見受けられます。形式的な教育だけでは、根本解決に至らない可能性がありますので、根本的な意識改革を目指すことが大切です。

(2)内部通報制度

内部通報制度を整備し、従業員が法令違反や不正行為を報告できる環境を整えることが必要です。これにより、潜在的な問題を発見し、対処することが可能となります。
内部通報制度には秘匿性にも注意しましょう。通報を行ったことで、通報した従業員が不当に扱われないことが重要です。正直に安心して通報を行える体制が無ければ、制度は有名無実化してしまいます。

(3)外部通報制度

通報制度には、内部通報制度だけではなく、外部通報制度も必要です。
通報を受けた担当者にとっても不都合な通報を受けた場合、その後対処が不十分になる可能性があります。仮に従業員の倫理観が高い企業であったとしても、その可能性を排除することは出来ないのです。

そのため、通常は顧問弁護士事務所等に依頼し、外部通報制度窓口を設置します。

(4)外部監査

第三者による外部監査を活用し、客観的な視点から社内のコンプライアンス体制を評価・改善することが重要です。外部の専門家による定期的な監査は、企業の信頼性を高める手段となります。

上場準備にあたり、まず会社自身が法令違反を認識出来てないケースが多いです。
スタートアップ企業では、これまで最小限の人員で業務にあたっていたという会社は多く、これまでの業務を否定するわけではありませんが、上場準備においてそれらはルール違反となっていることの理由にはなりません。
非常に厳しく対応が求められると言って良いでしょう。

6.最後に

日々の報道などで不祥事のニュースは事欠きません。
これらの記事を見かけた際、自社には関係が無いと思われていないでしょうか。しかし、これらのコンプライアンス違反に関するリスクはどのような会社にも存在するのです。

特に上場準備企業にとってのコンプライアンス強化は、IPOの成功にとって不可欠な要素であると言えます。法令遵守を徹底し、十分なコンプライアンス体制を維持することが、企業の持続的な成長、引いては新規株式公開に繋がるのです。

コンプライアンス体制の維持には終わりはありません。上場後もより強固な体制構築が求められることでしょう。上場会社とはそういった社会的な責任の重い企業であるということを十分に理解したうえで、体制整備にあたる必要があります。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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