決算日以外に子会社株式を取得した場合の連結開始日(みなし取得日とは)
2024年10月10日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.はじめに
企業が決算日以外に株式を取得し、支配権が獲得された場合、どの時点から連結を始めるかが問題となります。この点、理屈上は連結グループに入るのは支配権を獲得した時点からですので、連結開始日は理論上株式(支配権)を取得した日となるのが当然と思われるかもしれません。
しかし、株式等の売買は決算日以外に取引が行われる可能性もあり、支配獲得日が決算日とは限らないのです。
本コラムでは、みなし取得日の意味と、その適用における具体的な考え方について解説します。
2.支配権獲得日と決算日
子会社を取得した場合、その連結は支配権を獲得した日から始まります。
支配権は株式会社であれば主に株式の持ち分割合が重要とされ、多くの場合では株式の過半数を取得した日が支配権を獲得した日となります。なお、支配権の判定は必ずしも株式のみで判定するわけではありませんが、本稿では支配権に関する詳細な解説は省略します。
しかし、株式の売買は必ずしも決算日に行われるわけではありません。
決算とは関係のない会計期間の途中や、月末ですらない可能性もあります。しかし、連結開始の貸借対照表は決算整理後の確定値が必要とされるのです。
もしも、下記の「みなし取得日」の制度を適用しない場合、基本的に支配権獲得日で一度決算を行う必要がありますが、決算業務には一定の工数もかかり、場合によっては取引先からの請求書を始めとした証憑を入手しなければならないため、簡単なものではありません。
3.みなし取得日とは
上記のような課題に対応するため、実際に株式(支配権)を取得した日ではなく、その前後いずれかの決算日を用いて連結行うことのできる基準が設けられています。この、実際の株式取得日ではないが、便宜上適用する連結開始日を「みなし取得日」と呼んでいるのです。
前述の通り、半端な時期に決算を締めるということは簡単なことではありませんので、このみなし取得日の制度は実務上よく用いられます。
4.最後に
みなし取得日は、業務の効率化を図るために重要な役割を果たす制度です。
決算日以外で支配権を獲得した企業がある場合には、みなし取得日を適用することを一度検討をすることをお勧めします。
半端な月日での決算は煩雑であり、株式譲渡前後は決算以外の業務負荷も大きいことから、実務上はみなし取得日によって連結を行うことが多いといえるでしょう。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。