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2025年06月23日
M&A-COLUMN-

基本合意書(MOU)はどの段階で締結する? 基本合意書の締結時期、ステップ、意向表明書(LOI)、最終契約書(DA/SPA)との違い

2025年6月23日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

1.はじめに

M&Aにおいて、基本合意書(MOU)は、売り手と買い手が主要な取引条件について共通の方向性を合意のうえ、今後の交渉を円滑に進めるために締結される文書であり、M&Aのプロセスにおいて重要な書類です。
しかし、M&Aのプロセスには複数のステップがあり、具体的にどのタイミングで締結するべきなのか、また、意向表明書や最終契約書とどのように異なるのかについて十分な理解が必要です。
本コラムでは、基本合意書の締結時期とその役割について解説します。


2.基本合意書を締結するタイミング

基本合意書の締結時期として、「交渉を開始してから何カ月」というように決まった期間がある訳ではありませんが、M&Aプロセスの初期段階において、売り手と買い手が大枠の取引条件に合意した時点で締結されます。一般的なM&Aプロセスの流れと基本合意書の締結時期は以下の通りです。

1.M&A基本戦略の策定

    • 買い手、売り手ごとにM&Aを行う旨の意思決定、その基本的な方針を策定する。
    • 外部アドバイザーや仲介業者などへのコンタクトを取る。

2. トップ面談の実施(初期交渉)

    • 売り手と買い手の代表者同士で接触し、取引の可能性について話し合いを行う。

3. 意向表明書(LOI)の提示

    • 買い手が売り手に対して買収の意向を伝える。

4. 基本合意書(MOU)の締結

    • 売り手と買い手が主要な条件(譲渡価格、スキーム、独占交渉権など)を調整し、基本合意書を締結する。

5. デューデリジェンス(買収調査)の実施

    • 買い手が売り手の財務・税務・法務・事業などの状況を調査する。
    • 調査の結果を基に、最終契約の条件を詰める。

6. 最終契約書(DA/SPA)の締結とクロージング

    • デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な契約条件を確定し、最終契約書を締結する。
    • 必要な手続きを完了し、資金決済を行い、M&Aを完了させる。

このように、基本合意書はトップ面談の後、M&Aを進める意向を固めてから実施することが多く、M&Aの骨子をまとめて合意することを目的としています。なお、基本合意書締結の段階ではデューデリジェンスは実施前であることが一般的であり、以降これを前提として解説を行います。


3.意向表明書(LOI)と基本合意書(MOU)の違い

M&Aの交渉において、基本合意書と混同されやすい文書に「意向表明書(LOI)」があります。両者の主な違いは以下の通りです。

両者の記載内容は似通っているものの、意向表明書は、M&Aの初期段階で買い手が売り手に対して意思を示すためのものであり、必ずしも売り手が同意をするわけではありません。一方、基本合意書は、売り手と買い手が交渉を進めた上で締結されるため、比較的具体的な内容が含まれ、デューデリジェンスの開始に向けた基盤となります。


4.基本合意書(MOU)と最終契約書(SPA)の違い

基本合意書と最終契約書(DA:Definitive Agreement)は、大きく異なるフェーズで締結されます。
具体的な時期として、基本合意書はM&Aの序盤に締結するのに対し、最終契約書はM&Aの終盤に締結します。なお、最終契約書は、中でも特に重要な株式譲渡契約を指すSPA(Share Purchase Agreement)と呼ばれることもあります。

基本合意書はあくまで「仮の合意」であり、デューデリジェンスの結果に応じて条件が修正される可能性があります。デューデリジェンス等を行った結果、条件調整が入るということは珍しくありません。
一方、最終契約書は「確定した契約」であり、取引における諸条件を最終確定させます。


5.終わりに

基本合意書(MOU)は、M&Aにおいて売り手と買い手の間で取引条件を明確にし、交渉の方向性を定める重要な文書です。M&Aにおいて何故このような複雑なステップを踏むかというと、M&Aがそれだけ重要な取引であり、かつ双方への負担が大きいことに他なりません。

M&Aをスムーズに進めるためには、基本合意書の締結タイミングを適切に判断し、内容を慎重に検討することが重要です。専門家の助言を得ながら、交渉を進めることをおすすめします。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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