固定負債とは 固定負債の意味と例示
2024年1月26日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.固定負債とは
固定負債とは、支払期限が1年以上先である負債を指します。
固定負債は貸借対照表の負債の部に区分される項目です。
2.固定負債の例示
固定負債は大きく、長期的な金銭債務、長期性の引当金、その他に分類することが出来ます。
それぞれの分類ごとに代表的な勘定科目を例示します。
(1)長期金銭債務
①社債
社債とは、会社が資金調達のために発行する債券であり、発行者は資金調達の対価として満期日まで利息を支払い、満期日には元本を返済します。
設備投資を始めとした長期的な資金需要を賄うために利用されます。
②長期借入金
長期借入金とは、返済期限が1年を超える借入金をいいます。
企業が設備投資や事業買収など、長期的な資金需要を賄うために利用されます。社債は金融商品取引法の規制下にあり、発行手続も煩雑であることから利用する会社は限られており、多くの会社では長期借入金が身近な資金調達方法といえます。
③長期リース債務
長期リース債務とは、リース契約によって生じる1年を超える部分の支払義務を現在価値にしたものです。機械装置や車両運搬具など、長期的に使用する資産に利用されます。
リース料には利息の要素が含まれており、固定資産の取得資金を長期借入金により賄うことと同様の性格を持ちます。
(2)長期引当金
①退職給付引当金
退職給付引当金とは、従業員の退職後に支払われる退職金や年金の支払いに備えて計上される引当金です。企業が退職金制度を導入している場合(さらに具体的には確定給付年金制度)、将来発生する退職給付債務に対応するために必要となります。
(3)その他
①繰延税金負債
繰延税金負債とは、税効果会計を適用する場合に発生する負債です。
繰延税金負債の定義は難解なためここでの詳細な説明は省きますが、将来税金を増加させる効果のある税金計算上の負債とイメージしましょう。
3.固定負債の重要性/経営指標
固定負債は、企業の経営において以下の重要な役割を果たします。
特に長期金銭債務は、企業が長期的な資金を調達するために重要であり、設備投資や事業買収など、長期的な資金需要を賄うために利用されます。
固定負債の割合が大きい場合、財政状態は悪いと評価されがちですが、固定負債の適切な活用は、企業の経営戦略を遂行する上で重要です。例えば、長期借入金を利用して設備投資を行うことで、生産能力を拡大し、収益を増加させることができます。
固定負債を用いた分析指標も重要であり、代表的な指標を二点例示します。
- 固定負債比率:固定負債÷自己資本
固定負債比率は、会社の固定負債に対する依存度を示す指標です。比率が低いほど、借入金に依存していない経営を行っていることになります。あくまで一般的な指標ですが、固定負債比率は50%以下が望ましいとされています。
- 固定長期適合率: 固定資産÷(固定負債+自己資本)
長期適合比率は、固定資産が長期資金によって適切に賄われているかを示す指標です。比率が高いほど、長期資金で賄われている割合が高く、財務状況は安定していると判断されます。あくまで一般的な指標ですが、長期適合比率は100%以下が望ましいとされています。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。