流動負債とは 流動負債の範囲と例示
2024年1月11日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.流動負債とは
流動負債とは、1年以内に支払期限が到来する負債をいいます。貸借対照表の負債の部に計上され、短期的な資金繰りを判断する上で重要な指標となります。
具体例として、買掛金、支払手形、未払金、未払費用、短期借入金、前受金、未払法人税等、未払消費税、各種引当金などがあります。
2.流動負債の例示
流動負債には、以下のようなものがあります。
(1)買掛金
買掛金とは、営業活動によって発生した債務であり、仕入先への支払いがまだ済んでいない債務のことをいいます。営業活動以外から発生する債務は買掛金ではなく、未払金となります。会社毎に事業内容は異なることから、同じモノを買ったとしても、勘定科目が異なることがあります。
(2)短期借入金
短期借入金とは、借入期間が1年以内の借入金をいいます。
ただし、借入期間が1年間を超える借入金(長期借入金)の内、1年内に返済期限の当来する部分は「一年以内返済予定長期借入金」という他の勘定科目を使用する点には注意しましょう。
金融機関からの借入が多いと思いますが、金融機関以外から借り入れた場合であっても、同様の勘定科目を使用します。また、当座貸越についても、性質が近いことから短期借入金として処理します。
(3)未払金
未払金とは、営業活動以外で発生した債務をいいます。
買掛金との違いは、営業活動以外から発生した債務という点です。本業から発生した債務を買掛金、それ以外から発生した債権を未払金と考えましょう。
例えば、仕入から発生した債務は「買掛金」、販売費及び一般管理費など仕入以外から発生する債務は「未払金」というように、相手の勘定科目を想像すると分かりやすいかもしれません。
(4)未払費用
未払費用とは、決算日時点で役務提供途中のサービスで、決算日までに既に経過している部分をいいます。
勘定科目名が前述の「未払金」と似ているためか、実務上、混同しているケースがあります。
この二つの違いは、役務提供が完了しているか、役務提供の途中であるかという点にあります。
例えば、保険料のように期間を対象としたサービスを想定してみましょう。なお、保険料は後払いで、代金はまだ支払っていないものとします。
この場合、保険期間の途中(役務提供途中)で決算日を迎えた場合で、決算日までに既に経過している部分の保険料が「未払費用」となります。対して、保険期間は終了(役務提供完了)しており、代金がまだ支払われていないものが「未払金」となるのです。
(5)前受金
前受金とは、まだ提供していない商品やサービスに対して先に受け取った代金をいいます。
買掛金、未払金、未払費用はいずれも商品やサービスの提供が完了したものに対する支払義務でしたが、前受金は逆に商品やサービスを提供する側である点が異なります。
3.流動負債の重要性
流動負債は、企業の短期的な資金繰りを判断する上で重要な指標となります。一般的に、流動負債の少ない企業は、短期的な資金繰りが良好であり、債務を履行する能力が高いと考えられます。
流動負債は会社の財政状態を評価する際に利用されることがありますが、代表的な分析指標を例示します。
- 流動比率: 流動資産÷流動負債
流動比率は、短期的な債務の支払能力を示す指標です。流動比率が100%以上であれば、短期的な債務を支払う能力は良好であるといえます。
- 当座比率: 当座資産÷流動負債
当座比率は、流動資産の中でも特に換金性の高い当座資産を用いて、短期的な債務を支払う能力を示す指標です。当座比率が100%以上であれば、短期的な債務を支払う能力が高いと言えます。
当座資産には、現金預金を始めとして、受取手形や、売掛金、未収入金、売買目的有価証券が含まれます。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。