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2026年04月06日
企業会計-COLUMN-

材料等部材の仕入のみで収益は上がる? 収益認識基準における「一定の期間にわたり充足される履行義務(旧工事進行基準)」のインプット法における取り扱い

2026年4月6日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

収益認識基準の適用が開始され久しいですが、旧工事進行基準に相当する処理を行うにあたって、部材の仕入だけで進捗率を加算し収益計上をしていないでしょうか。原価をベースとしたインプット法を用いる場合、材料等の部材の仕入だけで進捗度が大きく跳ね上がり収益が計上されるように思える場面があります。

本コラムでは、まず収益認識基準における「一定の期間にわたり充足される履行義務」とインプット法の位置付けを整理したうえで、材料等の部材仕入(搬入)のみでどこまで収益を認識し得るのかについて、収益認識基準の考え方を解説します。

なお、本稿では解説上の便宜のため、収益認識基準における「一定の期間にわたり充足される履行義務」と従来の「工事進行基準」を同じように表現している部分があります。両者は厳密には異なるものですが、解説の趣旨から両者の違いを都度補足すると冗長になってしまうため、説明上の便宜のため両者を同じように扱っている点、ご容赦下さい。


収益認識基準では、顧客へのコントロールの移転が一時点ではなく、一定の期間にわたり行われる場合には、履行義務を期間にわたり充足すると判断し、その進捗に応じて収益を認識します。建設工事など、従来工事進行基準を適用していた取引の多くは、この「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当することとなります。
そして、この要件を満たす限りにおいて、これまでの売上計上(収益認識)金額の計算方法に大きな変更はありません。しかし、一部その考え方について明確化された部分があり、今回の記事の題材である「未据付材料」もその一つです。

ともあれ、大筋では従来の工事進行基準に近い考え方は踏襲されており、「一定の期間にわたり充足される履行義務に対する収益認識」という表現は少々ややこしくなったものの、進捗率に応じた収益計上がなくなったわけではありません。

期間にわたり収益を認識する場合、進捗度の測定方法としては、成果物の完成割合などアウトプットに基づく方法と、原価や作業時間などインプットに基づく方法があります。業種によりますが、アウトプットを客観的に測定することは難しいケースが多く、実務上インプット法を採用しているケースが多いと思います。従来の原価比例法は、基本的にこのインプット法に包含されたと思って良いいでしょう。

原価をベースとしたインプット法では、発生した原価を分子、見積総原価を分母として進捗度を算定し、その割合に契約金額を乗じて収益を見積もります。この計算構造自体は、旧工事進行基準の下で広く用いられていた方法であるため、基本的な枠組みを大きく変えることなく計算をできます。


まず、従来実務では材料等の部材を現場に搬入し、備え付け前であっても進捗率に加味(収益計上)されるケースがありましたが、進捗度の算定から除外するという考え方が示されました。

実際、材料や機器を仕入れ、現場に搬入しただけの段階においても、原価としては発生が認められる可能性はあります。しかし、その材料が据付や組立を経て初めて機能を発揮する性質のものであれば、顧客から見ると価値の移転はまだ限定的であり、対応する収益認識においては疑念が残ります。

さらに、搬入後しばらく使用しない時期が続くようなケースでは、極端な話、決算直前に材料だけをまとめて搬入することで進捗率を引き上げるといった、恣意的な操作も理論上は可能になってしまいます。収益認識基準がインプット法の運用に調整を求めている背景には、このような恣意性の余地を抑えたいという背景もあるものと思われます。

例えば、基準では総原価のうちエレベーター本体や大型機械のような高額部材が大部分を占める工事を具体例として挙げています。工事の初期段階でこれらの機器を調達して現場に搬入すると、その時点で発生原価は一気に増加し、原価をベースとしたインプット法で進捗度を計算すると相当程度の割合に達するように思われるかもしれません。

しかし、実際の据付や配線、試運転などの作業はほとんど残っているという状況も想定されます。この段階で契約金額の大きな部分に相当する収益と利益を認識することは、顧客への価値の移転状況を適切に表していないおそれがあります。

収益認識基準の適用指針でも、前述の通りエレベーター工事に関する設例が示されており、エレベーター本体の調達原価が工事原価の大部分を占める一方で、単に現場に搬入しただけの段階では、その原価を進捗度の算定から除外する処理が例示されています。エレベーターは据付が完了して初めて顧客が期待する機能を発揮するため、搬入だけの局面では企業の履行が十分に進んだとは判断できないという考え方です。

材料の支配が顧客に移転しているのであれば、その分について原価の発生を認識することは考えられますが、利益を乗せた収益まで実現しておらず、結果的に利益は据付や施工の進捗に応じて徐々に認識し、仕入段階では利益を含まない形で収益計上(収益と費用が同額で利益が出ない)を行うという扱いになる可能性が高いといえます。 

一方、金額的に少額で、かつ点数が多い材料も現場には多数存在します。これらについてまで一つ一つ厳密に未据付材料として管理しようとすると、実務が過度に煩雑になる可能性があります。そのため、未据付材料として進捗度から除外するかどうかを検討する際には、材料の性質だけでなく重要性の観点を加味することも大切です。重要性が乏しい材料については、実務上は通常の原価として進捗度の算定に含めるといった割り切りも必要です。


前述の会計処理を行うためには、自社の工事契約等の中に、高額で未据付の材料が含まれていないかを確認しなければなりません。ただ、対象資産は現場にあるものが中心であり、企業の倉庫にある在庫が対象になることは限定的です。そのため、まずはその状況を把握する経路を検討する必要があります。

適用指針の例示ではエレベーターが取り上げられていますが、対象取引によって構成する重要な材料は異なります。ある会社では大型機械かもしれませんし、別の会社では特殊な装置や専用のライン機器かもしれません。
自社の主要な工事・設備案件について、どのような材料が金額的に大きな割合を占めているのか、その材料は据付などを経て初めて価値を発揮する性質か、という点を洗い出し、未据付材料として扱うべきものがないかを検討することが重要です。

また、原価計算との関係についても十分な理解が必要です。
未据付材料を認識出来ていたとしても、原価計算システム上は既に原価の中に含まれており、そのままインプット法の分子に含まれてしまうことも考えられます。
未据付の材料を認識するだけではなく、企業の会計上どのようにそれが取り込まれているかを把握することも重要です。


本コラムでは、収益認識基準における「一定の期間にわたり充足される履行義務」とインプット法を前提として、材料等の部材仕入(搬入)のみで収益は上がるのかという疑問を整理しました。

従来の工事進行基準においても、これらの会計処理が明確に容認されていたわけではありませんが、解釈の余地があったというのが現実でしょう。しかし収益認識基準においては、材料の仕入や搬入だけの段階で、利益を伴う収益を大きく認識することは基本的に認められないということが明確化されることとなりましたので、もしもこのような処理をされている場合には注意が必要です。

収益認識基準の下では「顧客への価値の移転」をより強く意識した判断が求められます。ぜひ、自社の工事案件に当てはめ、高額で未据付の材料がないか、原価管理と進捗度計算が適切に連動しているかを点検するきっかけとしていただければ幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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