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2026年05月08日
企業会計-COLUMN-

新リース会計基準の基本をわかりやすく解説 改正理由と会計処理の変化、適用時期を整理

2026年5月8日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

2024年9月にリースに関する新たな会計基準が公表されて以降、実務への影響が話題になる場面は少なくありません。自社にどの程度の影響があるのか、対応が複雑になるのではないかと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

今回の改正は、単に勘定科目が変わるだけではありません。従前のファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて会計処理を行うアプローチ自体が変わり、基本的にオンバランスの範囲が広がります。特に、店舗、不動産、倉庫、車両、機器などを継続的に賃借により利用している企業では、財政状態、経営指標に影響が及ぶ可能性があります。

なお、本コラムでは、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を「新リース会計基準」、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及びその適用指針等を「旧リース会計基準」と呼称しています。


新リース会計基準が公表された背景には、借手のリースに関する負債が、従来の財務諸表に十分に反映されていなかったことがあります。現行基準では、借手及び貸手ともにリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類して会計処理を行っていました。このうち、オペレーティング・リース取引についてはオンバランスがされてこなかったため、借手が負担している将来の支払義務が、財務諸表上で十分に表れない場面がありました。

また、国際的な会計基準との整合性を図ることも、改正の大きな理由です。公表資料でも、海外の主要な会計基準では、借手について使用権資産とリース負債を計上する考え方が採用されていること、それにより日本基準との間で特に負債認識に差が生じていたことが説明されています。こうした状況を踏まえ、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上する会計基準の開発に着手したとされています。


従来は、借手はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分し、その区分に応じて資産及び負債を計上するか、賃借料として費用処理するかを分けていました。これに対して、新リース会計基準では、短期リースや少額リースなど一定の場合を除き、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する考え方に変わっています。借手については、リースの分類にかかわらず、使用権資産に係る減価償却費とリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルが採用されています。

使用権資産とは、借手がリース期間にわたって原資産を使用する権利を表す資産です。これに対し、リース負債は、その権利の対価として将来支払うリース料に対応する債務を表します。新リース会計基準では、借手はリース開始日に、原則として未払リース料から利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値でリース負債を計上し、これにリース開始日までに支払ったリース料、付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で使用権資産を計上します。

なお、計上後の会計処理について、リース負債(リース債務)に係る利息相当額を原則として各期へ配分し、使用権資産(リース資産)について減価償却を行うという考え方自体は、従来のリースに対する会計処理から大きく変わるものではありません。新リース会計基準で大きく変わるのは、このような会計処理の対象となるリースの範囲が広がる点です。もっとも、使用権資産総額に重要性が乏しい場合には、引き続き、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法や、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法を採用することができます。

先述の通り、新リース会計基準の実務上のインパクトは、オンバランスの対象が広がる点にあります。従来はオペレーティング・リースとして費用処理されていた契約の多くが、今後は使用権資産とリース負債の計上対象になります。そのため、店舗や事務所の賃借、倉庫、車両、各種設備の利用が多い企業では、総資産や負債残高が増加し、自己資本比率などの見え方が変わる可能性があります。さらに、新リース会計基準ではリースの識別に関する定めも設けられているため、これまでリース取引として会計処理されていなかった契約が、新たに検討対象に入る可能性がある点にも注意が必要です。

もっとも、すべての契約が一律にオンバランスになるわけではありません。リース開始日において借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まない短期リースについては、使用権資産及びリース負債を計上しない取扱いが認められています。また、少額リースについても、重要性が乏しい減価償却資産に係る基準額以下のリース、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、又は新品時の原資産の価値が少額であるリースについては、簡便的な取扱いが認められています。したがって、影響の大きさは、契約件数や契約金額だけでなく、これらの簡便的な取扱いにどこまで該当するかによっても変わります。


新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。一方で、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することも認められています。したがって、多くの企業にとっては、まず通常の適用時期を前提に準備を進めることが基本になります。

3月決算企業では、通常の適用を前提とすると、2027年4月1日開始の事業年度、すなわち2028年3月期から新リース会計基準を適用することになります。そのため、実務上は2028年3月期を見据えて準備を進めることが中心になります。なお、補足として、2025年4月1日開始の事業年度、すなわち2026年3月期から適用することも可能です。

各決算月における適用開始時期早見表は以下の通りです。


新リース会計基準によって、借手の会計処理が大きく変わることは間違いありません。ただし、影響範囲はすべての企業で同じではなく、業態や契約の内容によって大きく異なります。賃借契約が少ない企業では影響が限定的にとどまる場合もありますが、不動産や設備を幅広く利用する企業では、契約の洗い出しやデータ整備だけでも相応の対応が必要になる可能性があります。

無理に構える必要はありませんが、直前になってから対応を始めると、必要な情報が揃わず、想定どおりに準備が進まないこともありえます。まずは、自社の契約のうちどこまでがリースに該当するのか、短期リースや少額リースの対象がどの程度あるのか、財務諸表や金融機関対応にどのような影響が出るのかを把握することが大切です。本コラムが、新リース会計基準への準備を進める際の一助になれば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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