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2026年09月21日
企業会計-COLUMN-

当座借越はキャッシュ・フロー計算書で負の現金同等物になるか 短期借入金との違いと実務上の注意点

2026年9月21日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

当座借越は、貸借対照表では短期借入金に含めて表示されることが多いため、キャッシュ・フロー計算書でもそのすべてが財務活動として扱われると思われることがあります。しかし、実は実務指針もおいて、一定の場合に当座借越を負の現金同等物として扱うことが示されています。

本記事では、当座借越が負の現金同等物となる場合と、短期借入金として財務活動に表示される場合の違いを整理します。


キャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、現金及び現金同等物です。現金同等物とは、容易に換金でき、価値変動リスクが僅少な短期投資をいい、例えば取得日から満期日までの期間が3か月以内の定期預金や譲渡性預金が該当します。

実務指針(連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針)では、当座借越契約に基づく当座借越について、当座借越限度枠を企業が保有する現金及び現金同等物と同様に利用している場合には、負の現金同等物を構成するとされています。

つまり、会計上の表示区分には借入(短期借入金)であっても、日々の資金管理の中で現金残高のマイナスのように機能している場合には、現金及び現金同等物から控除する考え方が採られています。

金融機関からの資金調達は、一般的には財務活動です。
短期借入金も、営業活動や投資活動を維持するために資金を調達する取引であるため、原則として財務活動によるキャッシュ・フローに表示されます。

これに対して、負の現金同等物として扱う当座借越は、資金調達というよりも、日常の資金管理活動の不可分な構成部分と考えられます。したがって、貸借対照表上は短期借入金に含まれていても、キャッシュ・フロー計算書では現金及び現金同等物の期末残高から控除されることがあります。


負の現金同等物として扱われるか否かにおいて最初に検討すべき点は、当座借越が日常の資金繰りの中で現金及び現金同等物と同様に利用されているかです。例えば、入出金のタイミング差を吸収するために当座借越枠を利用し、短期間で残高が変動するような場合には、資金管理活動の一部として見られる可能性があります。

この場合、キャッシュ・フロー計算書上は、当座借越の期末残高を現金及び現金同等物の期末残高から控除して表示します。資金残高の調整として扱うため、借入による収入や返済による支出として財務活動に表示する処理とは異なります(財務活動によるキャッシュ・フローとして扱われない)。

一方で、当座借越の利用状況が明らかに短期借入金と同様の資金調達活動と判断される場合は、財務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載します。例えば、運転資金を一定期間補う目的で借入残高が継続している場合や、社内で借入による資金調達として管理されている場合には、負の現金同等物として扱うことは慎重に判断する必要があります。

実務上は、契約名称だけでなく、利用目的、残高の推移、社内の資金管理方法、金融機関との契約内容などを確認します。形式よりも、当座借越が企業の資金管理においてどのような役割を果たしているかが重要です。

当座借越が貸借対照表上で短期借入金に含まれていても、それだけでキャッシュ・フロー計算書上も財務活動になるとは限りません。実務指針では、負の現金同等物の期末残高を貸借対照表上の短期借入金に含めている場合でも、現金及び現金同等物の期末残高は、負の現金同等物の期末残高を控除した後の金額になるとされています。

このため、決算作業では、貸借対照表の表示科目とキャッシュ・フロー計算書の資金範囲を区別して確認することが大切です。特に連結決算では、会社ごとに当座借越の利用実態が異なることがあるため、グループ内で判断基準をそろえておく必要があります。


キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲は、毎期継続して適用することが求められます。当座借越を負の現金同等物に含めるかどうかは、単年度の都合で変えるものではありません。

資金の範囲を変更する場合は、会計方針の変更として取り扱われます。その場合には、変更した旨、変更の理由及び影響額の注記が必要となるため、変更前に十分な検討が必要です。

現金及び現金同等物の期末残高と貸借対照表上の科目別残高との関係について調整が必要な場合は、その調整を注記します。当座借越を負の現金同等物として控除する場合には、貸借対照表上の現金預金残高だけではキャッシュ・フロー計算書の期末残高と一致しないことがあります。

負の現金同等物として扱われる場合、現金預金、現金同等物、負の現金同等物の内訳を整理し、注記で説明できる形にしておくことにも注意が必要です。

当座借越を負の現金同等物として扱う場合、その増減を財務活動によるキャッシュ・フローの短期借入金の増減額にも含めると、同じ資金変動を二重に扱ってしまう可能性があります。

一方、短期借入金と同様の資金調達活動と判断する当座借越は、財務活動によるキャッシュ・フローに表示します。どちらの扱いを採るかによって、現金及び現金同等物の期末残高や財務活動によるキャッシュ・フローの表示が変わるため、作成段階で明確に区分する必要があります。


当座借越は、契約上は借入であっても、キャッシュ・フロー計算書では負の現金同等物として扱われる場合があります。判断の中心は、当座借越が日常の資金管理活動の一部として現金及び現金同等物と同様に利用されているかどうかです。貸借対照表の科目名だけで判断せず、利用実態、継続性、注記との整合性を確認することが重要です。

最後までお読みいただきありがとうございました。本記事が、キャッシュ・フロー計算書の作成実務の一助となれば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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