買い手においてデューデリジェンス(DD)は必須? M&Aに潜むリスクとDDの必要性 デューデリジェンスの要否、必須、省略の可否
2026年4月6日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
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1.はじめに
M&A(企業の合併・買収)を検討している場合、「デューデリジェンス(Due Diligence、以下DD)」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。DDとは、買収対象となる企業の実態や潜在リスクを多角的に調査・分析するプロセスのことで、買い手にとってM&Aの成否を左右する非常に重要な手続きです。
今回は、買い手側の経営者・実務担当者の方に向けて、DDの必要性や実施範囲について、公認会計士の立場から整理します。
2.M&Aにおける情報の非対照性について
M&Aの交渉では、売り手と買い手の間に大きな情報格差が存在します。
売り手は自社の財務状況・契約関係・事業環境を詳細に把握していますが、買い手が得られる情報は非常に限られています。
上場企業の場合、公開情報は一定量存在しますが、実際のM&Aでは非上場会社を対象とするケースが大半です。したがって、買い手は意思決定に必要な情報を自ら収集し、対象企業のリスク・財務実態・将来性を把握する必要があります。また、企業リスクは表面的な情報からは読み取れないことも多く、売り手企業からすれば高く売るために不都合な情報は隠したい誘因が働くことも想定しておく必要があります。
この「情報の非対称性」を補正し、交渉力を確保する手段がデューデリジェンスです。そのため、通常主導して行うのは買い手側であり、その目的は対象企業の実態を見極め、買収の可否や、適正な買収条件を導くことにあります。

3.なぜデューデリジェンスが必要なのか
M&Aでは、買い手が対象企業の資産・負債・契約関係・従業員関係をすべて引き継ぎます。
M&Aのスキームにもよりますが、代表的な手法である株式取得を利用する場合、対象とする企業の全てを引き継ぐと言っても過言ではありません。
したがって、もしも簿外債務や訴訟・税務リスクなどがあった場合、最終的損失を被るのは買い手企業となるおそれがあります。この辺りは契約の条件によってある程度リスク低減は可能なものの、それではカバーしきれないリスクも存在します。
場合によっては、時間的・コスト的制約から「簡易的なDDだけで済ませる」というケースもありますが、結果的に想定外の損失を被る事例も少なくありません。買い手の立場では、DDは「実施を検討するもの」ではなく、「実施して当然のもの」という認識が必要です。
また、売り手が合理的な理由なくDDを拒否する場合、その時点で強力なリスクシグナルと受け止めるべきでしょう。M&Aの成否を分けるのは、事前の情報取得と判断の質に他なりません。
4.実施するデューデリジェンスの範囲について
DDは、対象企業の全てを調査するものではありません。
買収の目的やリスクの重み付けに応じて重点領域を設定し、限られた期間とコストの中で効率的に行うことが重要です。
例えば、代表的なデューデリジェンスには以下のようなものがあります。
財務デューデリジェンス:資産・負債・損益構造、キャッシュフローなどの正確性を検証する
税務デューデリジェンス:過年度申告・税務リスク・繰越欠損金などを確認する
法務デューデリジェンス:契約・訴訟・知的財産・登記・許認可を調査する
事業デューデリジェンス:市場環境・競争状況・収益構造などの事業面を分析する
人事・労務デューデリジェンス:雇用契約・退職給付・労働法令対応の適性を確認する
環境デューデリジェンス:環境法令や排出規制・廃棄物管理リスクを確認する
特に財務DDを省略することは稀ですので、まずは財務DDを軸に調査を実施し、必要に応じて他分野に拡張する方法も有効です。
また、社内での基本調査もDDの一部であり、外部専門家に委託する場合は守秘義務契約(NDA)や利益相反の管理が不可欠です。場合によっては調査コストを許容できないということがあるかもしれませんが、それでも自社内で調査をする等、事前の企業調査は当然に行うべきものであるということを認識しましょう。企業調査には専門知識が求められるため、専門家の関与をお勧めしますが、企業内で買収先を調べることもデューデリジェンスに違いありません。
5.終わりに
M&A成功の鍵は「見えないリスク」の把握にあります。
まずはM&Aには常に大きなリスクが伴っていることを認識しましょう。
デューデリジェンスは、そのリスクを事前に見極め、どこまで受け入れるかを判断する経営上の重要手段なのです。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。
弊事務所では、デューデリジェンスを始めとしたM&Aに関する支援業務を幅広く提供しております。
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