毎月の役員報酬を変えるとどうなる? 定期同額給与の変更と損金不算入額の関係を解説
2026年8月18日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

1.はじめに
役員報酬は、法人にとって重要な経費の一つですが、役員に対する給与は原則として損金に算入することができません。ただし、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当する場合には、損金算入が認められています。
中でも多くの会社が採用しているのが定期同額給与で、一定期間にわたって一定額の役員報酬を支給し続けることが求められます。それでは、このルールに反して期中に報酬額を変更した場合、税務上はどのような取扱いになるのでしょうか。本稿では、定期同額給与を変更した場合の損金不算入額について解説します。
2.定期同額給与とは
定期同額給与とは、株主総会等の決議に基づき、一定期間ごとに同額の役員給与を支給する制度です。役員給与は原則として損金に算入できませんが、定期同額給与に該当すれば、その全額を損金に算入することができます。役員報酬を損金算入する方法の中でも、最も多くの会社で採用されている制度です。
役員報酬に厳しい要件が設けられているのは、役員が自らの判断で報酬額を増減させ、利益を調整して法人税の負担を不当に圧縮することを防ぐためです。そのため、原則として期首から期末まで同じ金額を支給し続けることが求められ、期中の変更には制限が課されています。
3.定期同額給与を変更できる3つのケース
まず、期中に役員報酬を変更しても損金算入が認められる(損金として処理できる)ケースを確認します。定期同額給与の変更が認められるのは、原則として次の3つの場合に限られます。
(1)通常改定(定時改定)
事業年度開始の日から3か月以内に行う改定です。
(2)臨時改定事由による改定
役員の分掌変更や役員の傷病、組織再編に伴う職制・職務内容の変化など、臨時の事情によりやむを得ず行う改定です。
(3)業績悪化改定事由による減額改定
業績が著しく悪化した場合など、やむを得ず行う減額改定です。
実務上、多くの会社で行われているのは(1)の通常改定です。それ以外の改定も認められていますが、いずれもやむを得ない事情があることが前提であり、経営者の判断で気軽に変更できるものではありません。
4.定期同額給与を変更した場合の損金不算入額
ここからは、定期同額給与の内、損金算入が認められない変更について解説します。
定期同額給与を所定の時期以外に変更した場合でも、基本的には変更前と変更後のいずれか低い方の金額までは損金算入が認められ、その金額を上回って支給した部分が損金不算入となります。
事前確定届出給与のように、届出額と1円でも異なれば全額が損金不算入となる、という取扱いではありません。
なお、法人税法上は損金に算入できない部分であっても、役員個人の側では所得税の課税対象となる点に注意が必要です。会社では損金にならず、個人では課税されるため、結果として二重に課税される形になります。
具体的な損金不算入額は、増額改定と減額改定で次のように計算します。
(1)増額改定の場合
増額改定後の役員報酬のうち、増額改定前の金額に上乗せして支給した部分の金額が損金不算入となります。
例えば、3月決算の会社が毎月50万円の役員報酬を支給していたところ、通常改定(事業年度開始から3か月以内)にも臨時改定事由・業績悪化改定事由にも当たらない時期(例えば10月支給分)から70万円へ増額したとします。この場合、増額前の50万円に上乗せした20万円の部分について、増額後に支給した10月から3月までの6か月分(20万円×6か月=120万円)が損金不算入となります。
(2)減額改定の場合
減額改定前の役員報酬のうち、減額改定後の支給額を上回る部分の金額が損金不算入となります。減額後の金額が本来の定期同額給与であり、減額前はその金額に上乗せして支給していたものと考えられるためです。
例えば、3月決算の会社が毎月50万円の役員報酬を支給していたところ、通常改定にも臨時改定事由・業績悪化改定事由にも当たらない時期(例えば10月支給分)から30万円へ減額したとします。この場合、本来の定期同額給与は減額後の30万円と考えられ、減額前に支給していた50万円のうち30万円を上回る20万円の部分について、4月から9月までの6か月分(20万円×6か月=120万円)が損金不算入となります。
なお、業績悪化改定事由による減額は、単に業績が振るわないというだけでは認められず、経営状況の著しい悪化などやむを得ない事情があることが前提となります。改定を行う際は、その時期と理由が要件に当てはまるかを事前に確認し、株主総会等の決議の内容を議事録として残しておくことが大切です。
5.終わりに
定期同額給与を変更すると税務上のメリットを損なうため、進んで変更するケースは多くありません。
そのため、変更時の取扱いに詳しくないという方も少なくないのではないでしょうか。誤った方法で損金不算入額を計算すると、申告金額を誤るおそれがあり、必要以上に損金不算入としてしまうことも考えられます。役員報酬の変更を検討されている企業の皆さまの参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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