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2025年08月25日
企業会計-COLUMN-

会計上のゴルフ会員権の評価方法 ゴルフ会員権評価における時価の有無、株券形態と預託金(保証金)形態

2025年8月25日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

1.はじめに

取引先との営業活動の一環として保有することのあるゴルフ会員権ですが、ゴルフ場を利用するためには様々な料金形態があり、これらの特徴を理解し会計処理を行う必要があります。その中でも特に会計処理に悩むことが多いとすれば、ゴルフ会員権の取得時と評価時ではないでしょうか。
税務会計においてはゴルフ会員権の評価を行うことは少ないかもしれませんが、企業会計においてはゴルフ会員権も評価の対象となります。

本稿では、ゴルフ会員権の定義と種類を整理したうえで、取得時および保有期間中の評価に関する会計処理について解説します。


2.ゴルフ会員権とは

(1)ゴルフ会員権の定義

ゴルフ会員権とは、ゴルフ場への定期的なアクセスを確保するための権利を指します。
ゴルフ会員権を所持することで、ゴルフ場施設を会員価格で利用することができる場合や、そもそも会員しか利用することのできないコースなども存在します。その他、特定の会員サービスを享受するために付与されており、法人でゴルフ会員権を所持するケースも少なくありません。

(2)ゴルフ会員権の種類(預託金(保証金)形態、株式形態)

ゴルフ会員権には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 預託金(保証金)形態
    会員権を取得する際に一定額の預託金を支払い、これをゴルフ場に預け入れる形態です。一定期間経過後または退会時に返還されることを前提としていますが、ゴルフ場の経営状況によっては全額の返還を受けられない場合もあります。
  • 株式形態
    ゴルフ場を運営する会社の株式を保有することによって会員の資格を得る方式です。
    株式を取得するわけですので株式数分オーナーの一人であると言えます。

このように、両者は同じゴルフ会員権でも所有者の位置づけが異なり、会計処理にも違いが出てきます。


3.ゴルフ会員権の取得価額

ゴルフ会員権は施設利用権の一種であり取得した場合には資産計上が求められ、通常は投資その他の資産に分類されます。
ゴルフ会員権を取得した場合、本体代金以外に関連する支出が生じるのが一般的です。ゴルフ会員権の取得価額を構成する費目には以下のようなものがあります(資産計上の対象となる費目)。

  • 会員権の購入代金(預託金または株式取得価額)
  • 名義書換料
  • 仲介(取扱)手数料等
  • 入会金

年会費やプレー代金は通常、交際費等の勘定科目で費用処理を行います。ただし、これはあくまで業務遂行上必要であるということが前提であり、業務とは関係の無い場合には役員報酬や従業員給与となる可能性がある点には注意が必要です。


4.ゴルフ会員権の評価

企業会計上、ゴルフ会員権は金融資産とされ、評価が必要とされます。
具体的には、時価等を参照し価値が著しく下落している場合(50%以上の下落)で且つ、回復可能性があると認められる場合を除いて、減損処理(引当処理)を行います。
ゴルフ会員権は、(1)時価の有無、(2)預託金(保証金)形態と株式形態の二つの視点から評価(減損の検討等)を行うこととなります。

(1)時価がある場合と時価が無い場合

ゴルフ会員権は上場株式のように活発な市場が存在するわけではありません。
ゴルフ会員権の売買を行うために、個別に仲介を行う流通業者等が時価を公表していますが、取引量が少ないため全てのゴルフ会員権に時価がつくわけではありません。
そのため、時価のある場合と、時価の無い場合に分けて評価方法が定められています。

  • 時価のある場合
    時価をもって減損の検討を行います。
  • 時価のない場合
    ゴルフ場運営会社の財政状態(実質価値)に応じて評価を行います。

(2)預託金(保証金)形態と株式形態で異なる評価方法

ゴルフ会員権の評価においては、その形態に応じた処理が求められます。

  • 預託金(保証金)形態
    預託金(保証金)形態で減損が必要となる場合、帳簿価額と時価(実質価値)との差額は貸倒引当金を計上します。減損の要否の判定基準は共通しており、帳簿価額と時価(実質価値)を比べ、50%以上下落している場合で回復の見込みがないかどうかで行います。
  • 株式形態
    株式形態で減損が必要となる場合、帳簿価額と時価(実質価値)との差額は評価損として計上します。この場合、ゴルフ会員権の帳簿価額は評価損の分だけ切り下げられることとなります。減損の要否の判定基準は共通しており、帳簿価額と時価(実質価値)を比べ、50%以上下落している場合で回復の見込みがないかどうかで行います。

なお、税務上の取り扱いにおいて、ゴルフ会員権の減損(引当)は原則として損金不算入とされ、損金算入が認められるケースは非常に限定的であるといえるでしょう。会計上と税務上の取扱いが異なる可能性が極めて高い点には注意が必要です。


5.終わりに

ゴルフ会員権は、所有する企業も多く、営業活動を中心に利用されることの多い資産です。
会計上は金融資産として評価が必要となりますが、発行形態も様々あり、取引量も少なく、株式に比べ信用できる市場が存在しないことから、一癖のある評価を行う必要があります。

実務においては、時価の有無、ゴルフ会員権の発行形態の二つの視点から会計処理が整理されていますので、所有するゴルフ会員権がどのようなものであるかを理解したうえで会計処理にあたるのが大切です。また、税務上の処理との乖離が生じやすい項目でもあるため、会計と税務の両側面を踏まえた対応が必要です。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


弊事務所では、企業会計(財務会計)に関する支援業務を幅広く提供しております。
初回ご相談時に報酬は頂いておりませんので、お気軽にお問い合わせください。

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