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2025年03月21日
企業会計-COLUMN-

収益認識基準の導入後、預り売上は認められるのか? 収益認識基準上の取扱い、請求済未出荷契約の収益計上要件

2025年3月21日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

会計実務上、未出荷売上や、預り売上という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは本来、得意先に出荷されてから売上計上する商品や製品について、販売元に商品が残っている状態で売上計上を行うことを指します。得意先の保管場所の問題などで、得意先からの要請があった場合に発生する取引慣行なのですが、このような状態は架空売上に利用されることもあることから、監査対象としてチェックされることがあります。

本コラムでは、預り売上の概念、収益認識基準上の取扱い、売上計上の要件、および対象資産(在庫)の取扱いについて解説します。


2.預り売上とは

預り売上とは、得意先から注文等はあり、企業側(販売元)も商品の準備は出来ているものの、出荷が完了していない状態で売上計上を行うことを言います。この場合、対象商品は企業側(販売元)に残っている状態です。この預り売上は無制限に認めると、売上の架空計上に利用される可能性があることから、収益化には一定の条件が設けられています。

実務的には請求書の発送をもって売上計上を行っている企業も多いと思いますが、請求書を送ることが売上計上の条件ではないのです。


3.預り売上の収益認識基準上の取扱い

預り売上とは通称であり、収益認識基準においては請求済未出荷契約として整理されています。
この請求済未出荷契約はそれ自体が問題という訳ではなく、取引慣行上起こり得るものです。
そのため、一定の要件を満たした場合には収益計上が可能であるとされています。
以下で要件の解説を行いますが、①在庫が企業側(販売側)に残っていること、②請求は既に終わっていることを前提とします。


4.売上計上要件

収益認識基準適用指針によれば、請求済未出荷契約における売上計上の要件として、次の4つの要件を全て満たす必要があるとされています。
全て満たして初めて収益計上が可能であるという点にご注意下さい。

(1)請求済未出荷契約を締結した合理的な理由があること

企業と得意先が合意の上で未出荷となっていることが求められ、請求済未出荷契約となる合理的な理由となります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 得意先の倉庫の準備が整っていないため、一時的に企業側で保管する必要がある。
  • 得意先の生産スケジュールの都合により、商品を受け取るタイミングを調整している。
  • 特別な納期要件があり、出荷は未了だが在庫の所有権は得意先に移転している。

基本的には企業側(販売元)の都合ではなく、得意先からの要請に基づく場合がこの要件に該当します。

(2)商品が得意先に属するものとして識別されていること

出荷前であっても、商品が特定の得意先に属するものとして識別されていることが必要です。
要するに、他の製品などと混在しており、特定の得意先に対するものであることが分からない状況ではこの要件を満たせないということです。
具体的には、以下のような状況が求められます。

  • 得意先向けに製造・準備された商品が区分管理されている。
  • 契約等により、企業(販売元)に当該商品の処分権限が存在しない。

(3)商品を得意先に引き渡す準備が完了していること

対象在庫が得意先へ引き渡しが可能な状態である必要があります。要するに出荷準備が整っており、先方からの要請があればすぐにでも出荷が可能な状態です。
これには、商品の完成、検査、輸送準備が整っていることが含まれるものと思われます。
原則、製造過程にある仕掛品などの状態ではこの要件を満たすことが出来ません。

(4)企業が商品を自由に使用できないこと

企業は、当該商品を他の得意先に販売したり、変更を加えたりすることができない状態でなければなりません。
例えば、企業が得意先からの指示なしに他社へ販売したり、商品を処分したり出来る状況にある場合、この要件を満たしません。

これらの要件を全て満たした場合、収益認識基準に基づき売上の計上が可能となります。
反対に、いずれかの要件が満たされていない場合は、売上計上を行わず、企業(販売元)の在庫として計上する必要があります。


5.対象資産(在庫)の取扱い

請求済未出荷契約において売上計上要件を満たす場合、該当する商品は企業側にて保管しているものの、棚卸資産として計上されることはなくなります。これは、対象在庫はすでに得意先が所有権を持っているためであり、ある意味当然のことなのです。
しかし、実地棚卸の運用を誤ると資産計上されてしまう可能性もあるのです。

(1)実地棚卸対象から除外

通常、棚卸資産は実地棚卸又は継続記録(受払記録)によって数量を確定します。
この内、実地棚卸は年に一度は必要とされており、且つ、実地棚卸の在庫数と受払記録の在庫数に齟齬がある場合、通常は実地棚卸の結果を使用します。
その結果、実地棚卸時に対象資産(請求済未出荷対象資産)を在庫としてカウントしてしまうと、棚卸資産計上されてしまう可能性があるのです。

これは会計部門側では「在庫ではない」と認識出来ていたとしても、実際に棚卸資産を数える者がその事実を知らない場合には、在庫数量としてカウントされ、棚卸資産として認識されてしまいます。対象資産が標準品であればなおさら他の資産との区別がつかないことから資産計上のリスクが高まります。
これら預り在庫は実地棚卸の対象外であることを明確化し、在庫計上対象から除外する必要があります。

(2)保管義務の発生

企業側が物理的に商品を保持している場合、得意先との契約内容により、保管義務が発生します。
必ずしも金銭のやり取りがあるわけではありませんが、保管費用が発生する場合には得意先に対して保管料を請求する場合もあります。
反対に、重要な保管コストが掛かるにも関わらず請求を行っていない場合には、監査等でその合理性を検証される可能性もあります。


6.終わりに

預り売上(請求済未出荷契約)の収益認識は、企業会計基準適用指針に基づき適正な判断を行う必要があります。売上計上には、請求済未出荷契約が得意先の合理的な要請に基づくものであること、商品が得意先に属するものであること、引き渡し準備が完了していること、企業が自由に使用できないことの4つの要件を満たすことが必要です。

また、売上計上後は、該当する商品を企業の棚卸資産として計上してはいけない点にも注意が必要です。理解はしていても、実地棚卸の際にカウント対象に含まれてしまうと、意図せずして資産計上されてしまうケースもありますので、実地棚卸の対象となっていないか今一度検証することも大切です。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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