建設仮勘定は償却資産税申告の対象となるか? 固定資産の状態と償却資産税の関係
2025年5月22日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.はじめに
建設仮勘定は、未完成の固定資産に対する支出を一時的に計上する勘定科目であり、有形固定資産を構成する勘定科目の一つです。しかし建設仮勘定はまだ未完成の状態であり、その点で他の有形固定資産とは異なります。
このような状態の資産が償却資産税申告上どう取扱われるかご存知でしょうか。
本稿では、この建設仮勘定と償却資産税の関係について解説したいと思います。
2.建設仮勘定とは
建設仮勘定とは、完成・引渡に至っていない固定資産に対する支出を資産計上するための勘定科目です。
特に完成までに時間のかかる建物などの不動産や、大型の設備に対して使用されることが多く、中には固定資産計上時は必ず建設仮勘定計上し、本勘定へ振り替えを行うという会計実務を行う場合もあります。
なお、建設仮勘定に計上された時点では資産として使用可能な状態にはなっておらず、最終的に完成時に固定資産として本勘定(本来の固定資産勘定)に計上されることになります。
ここで、建設仮勘定は有形固定資産ならどのような科目にでも使われる可能性があることに注意が必要です。
もしも建設仮勘定の対象が建物等の不動産であれば、固定資産税の対象となる可能性が高く、機械装置などの動産であれば償却資産税の対象となる可能性が高いといえます。この分類は勘定科目のみで判定することが出来ない部分がありますが、本稿のテーマから離れるため、この辺りの解説は省略します。
3.償却資産税申告上の取扱い
償却資産税は1月1日時点で事業の用に供することの出来る資産が対象となります。
事業の用に供することが出来る状態とは、対象資産が完成し使用可能な状態を言います。そのため、まだ使用を開始していないことから、減価償却を行っていなかったとしても償却資産税の対象となるのです。
この点、建設仮勘定は未完成の状態の資産ですので、通常は事業の用に供することが出来る状態にはないと考えて良いでしょう。これを踏まえると、建設仮勘定は償却資産税の対象外となる場合が多いものと思います。
ただし、これはあくまで実態判断が必要な点には注意が必要です。
建設仮勘定の会計処理が厳密に運用出来ている場合には、上述の通り償却資産の対象外となるものと思われますが、便宜的に償却を開始するまで建設仮勘定に残しているというような場合、気付かない間に償却資産税の対象となってしまっている可能性があります。
すなわち、資産としては既に完成しているものの、単に勘定科目の振替が行われていないだけの場合(建設仮勘定として処理しているものの、実際には固定資産が使える状態にある場合)には、課税対象となる可能性があります。
4.終わりに
建設仮勘定は、未完成の固定資産を計上する勘定科目ですが、その運用方法は会社によって差があります。
基本的に未完成の状態の資産であれば償却資産税の対象外となるものの、単純に勘定科目だけで判定できないケースもあるのです。
まずは自社の会計処理方法を確認し、建設仮勘定の中に完成済みの資産が含まれていないかを確認してみましょう。もしもそのような資産が有る場合、本勘定への振替や、償却資産として申告が必要になるかもしれません。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。
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