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2026年06月05日
企業会計-COLUMN-

新リース会計基準においては所有権の移転、移転外の判定もなくなる? 所有権移転に関する実務の変化

2026年6月5日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

新リース会計基準では、借手について従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分して会計処理する枠組みが見直され、原則としてすべてのリースを使用権資産とリース負債として計上する単一の会計処理モデルが採用されました。そのため、これまで使われてきた「所有権移転ファイナンス・リース」や「所有権移転外ファイナンス・リース」という区分は、借手実務において考慮しなくて良くなるのかという質問を受けることがあります。

本コラムでは、この点を旧基準と新基準の違いに沿って整理し、新基準でも所有権移転と所有権移転外の判定がなくなるわけではなく、主として減価償却方法の判断基準として残る点を確認します。


旧基準において、ファイナンス・リースに該当する場合、所有権移転ファイナンス・リースであっても、所有権移転外ファイナンス・リースであっても、基本的には通常の売買取引に準じた処理が求められていました。
この点、制度上の原則だけをみれば、所有権移転か移転外かによって、直ちにオンバランスかオフバランスかが決まるということではありませんでした。

しかし、旧基準の実務上、この所有権移転外という区分は非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、所有権移転外ファイナンス・リースに簡便法が設けられており、この簡便法を利用する企業が非常に多かったことが理由にあります。

具体的には、所有権移転外ファイナンス・リースでは、重要性が乏しい場合に賃貸借処理が認められており、代表的な基準に300万円基準があります。ほかにも、リース料総額が減価償却資産購入時の費用処理基準額以下のものや、リース期間が1年以内のものなどが挙げられます。
実務上はこうした簡便法を利用するケースが非常に多かったため、「所有権移転外に該当するかどうか」が、結果としてオンバランス処理を行うか、それとも賃貸借処理を行うかに強く結び付いていたといえます。


新基準では、借手は原則として使用権資産とリース負債を計上します。借手については、従来のようにファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分して異なる会計処理を適用するのではなく、単一の会計処理モデルに改められています。そのため、所有権移転と所有権移転外の区分は、借手においてオンバランスかオフバランスかを直接分ける指標ではなくなりました。もっとも、短期リースや少額リース資産に係るリースについては、使用権資産とリース負債を計上しない取扱いが認められており、オフバランスとする例外は残っています。ただし、その例外は所有権移転かどうかで決まるものではありません。

このように、新基準で実務上の重心が移るのは、所有権移転外かどうかではなく、そもそも契約がリースに該当するか、リース期間をどう見積もるか、購入オプションを行使することが合理的に確実かといった点です。したがって、借手実務では、所有権移転区分の重要性が失われたというよりも、重要となる局面が変わったと整理するのが良いでしょう。

但し、新基準でも、所有権移転と所有権移転外の判定自体がなくなるわけではありません。
所有権の判定が主として影響するのは、使用権資産の減価償却方法です。所有権移転があるリースでは、自己所有の固定資産と同様の考え方で減価償却を行い、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額によって判断します。これに対し、所有権移転がないリースでは、原則としてリース期間を基礎として費用配分を行うことになり、いわゆるリース期間定額法の発想に近い整理になります。残存価額も原則としてゼロで取り扱うことになります。

この点、旧基準に非常に類似しており、以前の処理を踏襲していると言えますが、完全に同じというわけではありません。例えば、残価保証に係る借手の支払見込額は、新基準では借手のリース料の構成要素として扱われています

したがって、新基準における所有権移転区分は、従来のようにオンバランスかオフバランスかを左右する区分というより、主として減価償却方法を判断するための基準に変化したと理解するのが分かりやすいと考えられます。


旧基準では、所有権移転と所有権移転外の区分は、制度上の原則以上に、簡便法の適用可否を通じて借手実務に大きな影響を与えていました。これに対して、新基準においては原則オンバランスとなるため、所有権の判定はオンバランスかオフバランスかを分ける直接的な基準ではなくなります。

一方で、所有権移転と所有権移転外の判定自体は残っており、主として使用権資産の減価償却方法を判断するうえで引き続き意味を持ちます。新基準への対応では、従来の感覚をそのまま引き継ぐのではなく、この区分の役割がどこに残るのかを整理して捉えることが重要です。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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