繰延資産とは 税務上の繰延資産と会計上の繰延資産の違いと会計処理
2024年2月1日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.繰延資産とは
繰延資産とは、本来は費用として処理されるべき支出を、その効果が将来にわたって及ぶと認められる場合に、資産として計上するものです。貸借対照表の資産の部に計上され、その効果が及ぶ期間にわたって費用化されます。
繰延資産は会計上と税務上で定義や処理が異なり、企業会計の対応が必要な場合には、特に両者の違いを意識する必要があります。
(1)会計上の繰延資産
会計上の繰延資産は以下の通り具体的に列挙されています。
効果が将来に及ぶという意味では多くの費用が該当しますが、むやみに繰延資産計上をすることは出来ません。下記の定められた延資産以外に繰延資産が計上されることは稀であるといえます。
- 創立費:会社設立のために発生した費用で、例えば、定款作成費用、登録免許税などが該当します。
- 開業費:事業開始のために発生した費用で、例えば、看板の製作代金、印鑑や名刺の作成代金、開業広告費などが該当します。
- 株式交付費:株式交付のために発生した費用で、例えば、金融機関等に支払う取扱手数料や、変更登記にかかる登録免許税など、株式の交付に直接必要となる費用が該当します。
- 社債発行費:社債発行ために発生した費用で、社債募集の広告費、金融機関等に支払う取扱手数料などが該当します。
- 開発費:新技術や資源の開発などのために発生した費用で、大規模な設備投資に要した支出などが該当します。
創立費と開業費は似ていますが、その違いは発生時期の違いにあります。
創立費は会社設立までに発生した費用で、開業費は会社設立から事業を開始するまでにかかる費用が該当します。
(2)税務上の繰延資産
税務上の繰延資産は、上記の会計上の繰延資産とは少し範囲が異なります。
上述の会計上の繰延資産に加えて、税務上特有の繰延資産が追加されます。具体的には以下のものが税務上の繰延資産として定められています。
- 公共的施設等を設置改良するための負担金など
例)自社が間接的に利益を受けられる道路、堤防などの施設に関する負担金など - 資産の賃借に必要な権利金や立ち退き料など
例)建物賃借の際の権利金、礼金など返還されないもの - 役務の提供を受けるために必要な権利金など
例)FC加盟金、ノウハウ伝授ための頭金など - 広告宣伝用資産を贈与費用
例)広告宣伝のための看板、陳列棚などの贈与など - 上記以外で自己が便益を受けるための費用
例)同業者団体の加入金、出版権の設定対価
税務上の繰延資産は、会計上の繰延資産に比べると、各項目に幅があり範囲が広いです。
税務上は繰延資産であったとしても、会計上は繰延資産に該当しないため、「長期前払費用」として計上することが一般的です。
2.繰延資産の会計処理
繰延資産は、支出時に資産計上し、その効果が及ぶ期間にわたって費用化されます。
ただ、その効果が及ぶ期間を客観的に見積もることは困難なため、会計上、税務上定められた期間で償却を行います。
3.繰延資産と固定資産の違い
繰延資産は将来に効果が及ぶ費用を資産として計上するものと説明しましたが、1年間を超えて効果が及ぶという意味では固定資産も変わりありません。繰延資産と固定資産は何が異なるのでしょうか。
その根本的な違いは、繰延資産は本質的には費用であるということにあります。
固定資産に計上される資産はその程度に差はあれ、基本的には換金可能性があり、本質的には資産としての性格が強いです。それに対して、繰延資産には基本的に換金価値がなく、本質的には資産でなく費用に近いといえるでしょう。
また、繰延資産に近い勘定科目として、長期前払費用があります。
勘定科目の性質は非常に近く、実際、税務上のみで認められる繰延資産は、長期前払費用として処理します。
両者の違いを特定することは難しいですが、長期前払費用は契約期間などでその効果の及ぶ期間が明確なのに対し、繰延資産は、効果の及ぶ期間を客観的に測定することが難しいものであると考えると良いでしょう。
また前述の通り、将来に効果の及ぶ費用という意味では、他にも多くの費用が存在しますが、むやみに繰延資産を計上出来ると客観性が損なわれ、利益操作に利用されてしまいます。
そのため、繰延資産はむやみに計上することは出来ず、会計上、税務上定められたもののみを繰延資産として計上することが出来るのです。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。