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2026年04月03日
税務会計-COLUMN-

役員退職金の計算に賞与は含める? 事前確定届出給与と最終月額報酬の関係を整理

2026年4月3日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

1.はじめに

本稿は、役員退職金の算定で用いられる最終月額報酬において、賞与の性質を持つ事前確定届出給与を最終月額報酬に含めるかを解説します。
ただし、役員退職金は規程の文言や支給実態、意思決定過程など個社事情の影響が大きいため、以下は一般的な整理であり、個別事案では結論が異なる可能性がある点にはご留意ください。


2.役員退職金の算定枠組みと最終月額報酬

役員退職金の計算は多くの企業では功績倍率法が用いられ、「退職金=最終月額報酬×勤続年数×功績倍率」の計算式が広く利用されています。しかし、この算式が指定されているわけではなく、法令上は退職金の金額が不相当に高額ではないことを求めているに過ぎません。
ここでいう不相当に高額な部分や、事実を隠蔽して支給する部分は損金の額に算入されません。

不相当に高額かどうかの判断は、退任する役員が法人の業務に従事した期間、退職に至った事情、同業類似会社の役員退職給与の支給状況などを総合的に考慮して、当該役員の退職給与として相当と認められる水準を超えるかどうかで判断することが求められており、この限度を超えた部分は損金不算入となります。

月額報酬については、退職直前の最終月額報酬を基礎に計算することが多いと思いますが、同業他社の報酬水準を把握できる場合には、これらを参照するケースもあります。
法令上も「同業類似会社の役員退職給与の支給状況など」と明記されており、必ずしも最終月額報酬に固執する必要はありません。


3. 定期同額給与の基礎整理

定期同額給与は、一定期間ごとに同額で反復継続して支給される役員給与です。
期首三カ月以内の改定や職制上の地位変更、経営の状況の著しい悪化など、限定的な事由以外は原則として年間通じて金額の変更はありません。
実務上、最終月額報酬はこの月例の定期同額給与を参照し算定することが多いと思われます。
ただし、租税回避のために退職直前のみ形式的に月額報酬を増減させたような場合は、損金算入出来ない可能性があります。


4.事前確定届出給与の基礎整理

事前確定届出給与は、支給時期と金額等をあらかじめ決議し、所轄税務署に期限内で届出し、届出どおりに支給した場合に損金算入が認められる役員賞与の枠組みです。
定期同額給与と異なり、反復継続性は必須ではなく、性質は役員にとっての賞与といえます。
期限徒過や支給変更があると損金算入が認められない可能性があるため、手続の適正が重視されます。

この事前確定届出給与(要するに賞与)を、最終月額報酬(対象期間(12か月)で除した金額)に含めるか否かで、最終報酬月額は大きく変動することとなります。


5.事前確定届出給与を最終月額報酬に含めるか否か

(1)基本的な見方

最終月額報酬は退職直前の月例的な給与水準を示す概念として理解されることが多く、賞与的性格を持つ金員は含めない整理が実務では一般的と考えられます。

(2)判例が示唆する方向性

判例において、完全に否定されているわけではないものの、事前確定届出給与(年額に対して月数で除した額)を最終月額報酬に加算する考え方は採用されていません。
最終報酬月額では、定期同額給与の月額部分が基礎とされ、事前確定届出給与(賞与)は通常算定の基礎から除外されています。

(3)含める設計とした場合の留意

法令上は事前確定届出給与に関する取扱いについて言及をしておらず、最終月額報酬に事前確定届出給与の按分額を含めるということが問題あると言い切れせん。
そのため、個社の事情を斟酌したうえで事前確定届出給与を含めた計算を行うことも考えられるものの、主流の方法ではなく、税務上否認されるリスクを伴うということは念頭に入れておく必要があります。

(4)総合判断

結論、最終月額報酬に事前確定届出給与を含めるかについては、絶対的な算定式があるわけではありません。しかし、実務全体を踏まえると、届出給与は賞与的性格を有するため最終月額報酬に含めない整理が無難と思われます。
一方、個社の報酬設計や支給実態を斟酌のうえ、事前確定届出給与を含める算定式も検討する余地はあります。
その場合、社内規程の整合性と、同業他社の報酬水準や職責、退任の理由などの多面的に検討を行い、意思決定の過程(文書)や根拠資料は残しておいた上で、その合理性を説明できるようにしておくことをお勧めします。


6.終わりに

本稿では、最終月額報酬の把握を月例の定期同額給与を起点に考え、事前確定届出給与は原則として含めない整理が一般的であることを解説しました。

もっとも、役員退職金は不確定な部分が多々あります。
定期同額給与だけでは合理性が無いようなケースもあると思いますが、事前確定届出給与を含めて役員退職金を計算する場合には、個社の事情の斟酌し、社内規程の整合性や、同業他社の報酬水準などを参考にしたうえで、その金額の合理性を説明できるようにしておくようにしましょう。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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