譲渡、贈与、相続の違いと課税関係について それぞれの意味と対象となる税金
2024年9月11日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.はじめに
M&Aや事業承継の際に出てくる株式の譲渡や贈与について、その違いをご存知でしょうか。
財産の移転に関わる「譲渡」、「贈与」、「相続」という三つの概念は、税務上異なる意味を持っています。
それぞれの違いを理解することは、資産管理や相続対策を行う上で重要です。本コラムでは、これらの違いについて解説します。
2.譲渡
(1)譲渡の定義
譲渡とは、財産を有償で第三者に移転する行為を指します。
有償とは対価の支払いがあることを言います。例えば、第三者に対して不動産や株式を譲り渡す際、通常は金銭を受け取ると思います。これが対価となり、譲渡にあたることとなります。
(2)譲渡の課税関係
個人が譲渡を行う場合、その売却益に対して所得税が課税されます。
3.贈与
(1)贈与の定義
贈与は、財産を無償で第三者に移転する行為を指します。
この無償であるということがポイントですが、相場に対して著しく低額な譲渡を行う場合には、みなし贈与課税が課される可能性があります。
極端な話、相場に対して1円でも対価を渡せば贈与税がかからないというわけではありません。
(2)贈与税の課税
贈与を受けた側には贈与税が課されます。
贈与税は、年間で基礎控除額を超える部分に対して課税されることとなります。年間の合計額で判定するため、一回ごとの金額が基礎控除内であったとしても、合計すると贈与税がかかるということもありますので注意しましょう。
また、上述にある通り、無償でなく1円でも金額を付ければ贈与税の対象外となるかというとそうではありません。
相場と一口に言っても実は簡単なものではありませんが、著しく低額な価格での譲渡はみなし贈与の対象となることに注意が必要です。
4.相続
(1)相続の定義
相続は、被相続人が死亡した際、その財産が法定相続人に移転することを指します。
(2)相続税の課税
相続では、相続人が遺産分割協議などを通じて財産の移転が行われます。
相続財産が一定額を超える場合には相続税が課されます。
なお、相続税と贈与税は密接に関係しており、贈与税には相続税の脱税行為を防ぐ役割もありますので、単純に亡くなる前に財産を贈与しておけば良いというものではありません。
5.最後に
譲渡、贈与、相続は、いずれも財産の移転を伴う行為ですが、それぞれの行為には異なる税務上の取り扱いが存在します。資産規模が大きくなれば課税関係も大きく異なり、特に注意が必要となりますので、これらの違いを理解し、適切に対応することが重要です。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。