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2024年08月13日
COLUMN

連結子会社の決算期が異なる場合の手続、調整や対応方法 連結グループ内で決算期が異なるメリット、デメリット

2024年8月13日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

上場企業等で作成が義務付けれられている連結財務諸表について、親会社と子会社の決算期が異なる場合にどのように会計数値を連結するかご存知でしょうか。実務上はよくある問題ではあるのですが、初めてこのような状況に直面すると対処方法を悩んでしまうかもしれません。

本コラムでは、連結子会社の決算期が異なる場合のメリットやデメリット、仮決算や期間調整の必要性について解説します。

2.連結グループで決算期を変えるメリットとデメリット

(1)連結グループ内で決算期を分散させるメリット

決算期を変えることで、個社の決算作業を分散させることが出来ます。
決算締め作業や申告業務など、決算日後に対応しなければならない事は多く、もしも仮に親会社が子会社の決算まで負担している場合、業務負荷を軽減することが出来ます。
また、各子会社の事業サイクルや市場状況によっては特定の決算期が良い場合もあります。また、特定の国や業界では、法律上決算期を変えることが出来ないケースも存在します。

(2)連結グループ内で決算期を分散させるデメリット

決算期が異なると、各社異なる期間の財務情報を連結するための調整が必要となります。
結果、連結財務諸表の作成が複雑化し、連結決算業務に掛かる負荷が増加します。
上記のメリットでも業務負荷の分散が可能と記載しましたが、これはあくまで個社の決算対応における業務分散が可能ということであり、連結上は手続が増加してしまうのです。

(3)比較考量

上述のように、メリット、デメリットいずれも業務負荷を挙げています。
要するに、決算期を分散することで、個社ベースの業務負荷は分散させることが出来るが、連結業務の負荷は増大する可能性があるということです。
どちらを選択すべきかは各社の状況によって変わりますが、以下のような点を考慮して判断を行うのが良いでしょう。

  • 子会社の経理能力
  • 親会社の連結経理体制(十分な人材が配置されているか)
  • 連結グループ間の取引頻度、取引内容
  • 連結範囲の変更頻度(子会社の取得、売却を行う頻度)

必ずどちらかが良いという話ではありませんが、最近は連結業務の負荷を軽減するため、決算期を統一するケースが多いのではないでしょうか。
反対に、連結財務諸表を作成する義務のない会社では、個社の決算業務や申告業務を分散させるために子会社の決算期を分けているケースも多いです。

3.仮決算を行う場合

親会社と決算期が異なる場合、原則として子会社は仮決算を行う必要があります。
子会社は実際の決算日とは別にもう一度決算を行わなければならず、決算業務を二回実施することになってしまいますので、負担となってしまうことは言うまでもありません。

但し、子会社の決算日と連結決算日の差異が3ヶ月を超えない場合には、仮決算によらず、子会社の通常の決算情報を基に連結することが出来ます。
実務上はこの容認規程を利用することがほとんどであり、新たに連結子会社を取得したようなケースでは、まず決算期のズレが3ヶ月を超えないか否かを確認します。

4.仮決算を行わない場合

子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、仮決算を行うことが原則であることは上述の通りですが、仮決算を行わない場合であっても、その相違により連結グループ間で重要な不一致がある場合には調整を行う必要があります。
この重要な不一致とは、決算日の相違期間中に行われた連結グループ間の取引が対象となり、いくら金額的に重要な取引であっても、連結範囲外の外部取引は調整を行いません。

(1)売上、仕入等に関する取引

決算日の相違期間中に売上や仕入、固定資産の売却や取得が行われた場合、片方では取引が計上されているのに対し、一方は取引が計上されていないことから、連結相殺を行う際に齟齬が起きてしまいます。
そのため、取引を計上していない側では連結調整を行ったうえで、相殺仕訳を入れることとなります。
例えば、親会社で仕入を計上しているにも関わらず、子会社では売上が計上されていない場合には以下のような仕訳を行います。

①期間差異発生年度

(    売掛金    )   /   (    売上    )

②期間差異発生翌年度(振戻処理)

(     売上     )   /   (   期首利益剰余金   )

(2)配当に関する取引

子会社の貸借対照表日から親会社の決算日(連結決算日)までの間に配当が行われる場合、子会社では配当に関する処理が行われていないにも関わらず、親会社では受取配当金の処理が行われてしまいます。
そのため、子会社側で親会社に対する支払配当金を計上する連結調整が必要となります(その後、親会社と子会社で受取配当金と支払配当金の相殺処理を行います)。

( 利益剰余金(配当) )   /   (   現金預金等   )

5.最後に

連結子会社の決算期が異なる場合、まずは決算期統一を行うべきか検討を行う必要があります。
仮決算が必要になる場合、特に業務負荷が大きくなるため、決算期の差異が3ヶ月を超えるか否かはとても重要です。

決算期を統一しない場合には、仮決算や期間調整などの業務負荷が掛かることを十分に理解したうえで判断を行いましょう。個人的には、連結業務を行う期間は非常にスケジュールがタイトになりますので、連結会計期間はなるべく統一することをお勧めしています。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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