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2024年08月09日
COLUMN

連結業務の効率化、業務負荷軽減策 経理業務の効率化、スリム化

2024年8月9日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

連結財務諸表は会計情報の中でも重きを置かれています。
この連結財務諸表は、企業グループ全体の財務状況を正確に把握するために不可欠であり、上場企業を始めとした企業では作成が義務付けられています。
しかし、これらの業務は複雑であり、経験する機会も限られていることから、担当者にとって大きな負担となることが少なくありません。
本コラムでは、連結業務に伴う負荷を軽減するための具体的な方法について解説します。

2.連結業務の負荷軽減の必要性

(1)連結業務の重要性と課題

連結財務諸表の作成は、企業グループ全体の財務健全性を評価するために不可欠な作業です。
しかし、複数の子会社を持つ企業にとって、各子会社からの財務データの収集・統合は時間と手間がかかり、連結に必要な情報を集めるだけでも負荷がかかります。

なお、一口に子会社と言っても、親会社が一から設立した企業と、M&A等で取得した企業では状況も異なります。
親会社の設立した企業では親会社の社風や管理体制を円滑に浸透させられるのに対して、異なる文化や管理体制を持つ企業を買収する場合、科目体系を始めとした管理体制が異なることは珍しくないどころか、十中八九異なる社内文化や管理体制を持っています。会計処理の癖や科目の使い方など、会計も会社によって個性があります。これを一つの財務諸表にすることは実は労力の掛かることなのです。

3.連結業務の負荷軽減策

(1)決算期の統一

子会社の決算期が親会社と異なる場合、連結業務はさらに複雑化します。
子会社の決算期を変えることは、繁忙期の分散に役立つ一方、連結上はデメリットを抱えています。
連結上、決算期のズレが3ヶ月を超える場合、仮決算が必要となりますが、決算期のズレが3か月未満であったとしても、期間調整を行う必要があります。

このデメリットは大きく、近年では連結グループの決算期を統一する企業が増えています。
決算期を統一することで、期間調整が不要となり、各社の財務データを同時に処理することも可能となることで作業の効率化が図れます。

(2)勘定科目体系の統一

親会社と子会社の間で勘定科目体系が異なると、連結時に組換を行う必要があり、調整作業が必要になります。
もしも子会社で新たな勘定科目が作られれば、連結上の取り扱いを検討する必要もあり、地味な業務ですが、業務負荷の大きい時期に煩雑な作業を行う必要が出てくるのです。
勘定科目の統一により、この作業を大幅に削減でき、また、財務データの一貫性も向上します。結果、連結業務の負担が軽減され、ミスの防止にも繋がります。

(3)連結システムの導入

連結作業はエクセルといった表計算ソフトで行うことも可能ですが、連結決算のためのシステムを導入することも有効です。
連結システムを導入することで、データの自動連携やチェック機能の強化が可能となり、業務の効率と正確性の向上が図れます。特に、連結システムは複数の子会社を持つ企業にとっては、特に有効と言えるでしょう。

ただし、システムを導入すれば全自動化されるような誤解をされている場合が見受けられます。
システムを導入する場合でも、使う側に一定の理解が必要なことに注意をしましょう。親会社側、子会社側でどのような情報が必要なのか理解したうえで、システムを利用する必要があります。
連結システムに限った話ではありませんが、システムは設計通りに処理をしてくれる素晴らしいものですが、操作側が誤った処理をすれば誤った結果となってしまいますので、何もかもシステムが行ってくれるわけではないことを十分理解することが必要です。

(4)連結パッケージの導入

連結パッケージとは、連結業務全体をサポートするツールのことを指します。
上記の連結システムを導入しなかったとしても、エクセル等で連結パッケージを作るだけでも業務の効率化が可能です。
子会社ごとに情報の提出形式が異なる場合、まずは情報整理をしなければなりませんが、この業務は非常に煩雑です。子会社からの提出資料のフォーマットを統一し、必要な情報を整理することで、業務をスリム化することが出来るのです。

(5)内部取引の削減

親会社と子会社間の内部取引が多い場合、それぞれ連結調整が必要となり、連結業務が複雑化します。例えば、内部利益を乗せて固定資産を売買する場合等、一度の取引を以降何年にも渡って調整しなければならないような取引も存在します。
そもそも内部取引を最小限に抑えることで、連結時の調整作業が減少し、負荷軽減に寄与することが可能となります。

連結グループ間の内部取引が避けられない場合も存在するため、全てを無くすことが難しいと思いますが、重要性の乏しい取引などは初めから取引を行わない、内部利益を乗せない等するだけでも連結業務は軽減することが出来ます。

(6)外部専門家の利用

連結関係の業務を社内で負担せず、外部専門家を活用することも有効です。
連結業務が必要な企業は少なく、そもそもノウハウを持っている人材が多くありません。新規に人材を確保し、指導を行うよりも外注をしてしまう方が早期に課題に対処可能なケースが多くあります。
これにより、内部リソースの負担を軽減し、業務の質の向上、コスト削減にもつながります。

4.最後に

連結業務は、企業グループ全体の財務状況を表示するために不可欠なプロセスです。
しかし、昨今の経理人材が不足している環境の中、その業務負荷を軽減することはもはや避けて通れない課題であると言えるでしょう。

この課題は優先度が高く、業務負荷が一定のまま担当者いなくなってしまった場合、大きな問題に直面してしまうケースが実際に起きています。

これらの課題解決のために、本コラムで紹介した方法が参考になれば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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