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2024年11月07日
COLUMN

関係会社株式の減損と連結会計上の持分法との関係について 持分法適用会社に対するのれんの減損

2024年11月7日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

資本関係のある関係会社の財政状態が悪化した場合、関係会社に対する投資の評価減(減損)を検討しなければならないことがあります。単体決算上、関係会社株式の評価減を行った場合、連結会計上はどのように取り扱われるかご存知でしょうか。

本稿では、関係会社株式とは何か、その単体上の減損の取り扱いに加え、連結会計上の取り扱いとの関係について詳しく解説します。

なお、本稿では、持分法適用会社となる関係会社株式の単体上の減損処理、連結上の取り扱いについて解説を行っておりますので、子会社に該当するケースや、連結対象外となるケースは前提としておりません。また、会計監査人設置会社であることを前提として解説を行っている部分があります点にもご注意下さい。

2.関係会社株式とは

関係会社株式は、出資などを通じて影響力を持つ企業の株式をいいます。
この影響力で最も考慮すべきなのは、議決権の保有比率ですが、役員の兼務や、人的、技術・取引関係などを通じて総合的に評価します。関係会社とは、「親会社」、「子会社」、「関連会社」、などが含まれますが、本稿では「親会社」や「子会社」は除き、その他の関係会社について焦点を当てて解説をします。

具体的には、企業が他社に対して直接・間接的に議決権の20%以上を所有しており、その会社の財務や事業の方針決定に対して重要な影響力を持つ投資先が関係会社に該当します。議決権の50%超える場合には子会社に該当しますので、勘定科目を分け、「子会社株式」としている企業も多いのではないでしょうか。
また、議決権の15%以上を所有し、一定の要件を満たす場合にも関連会社として扱われます。たとえば、重要な役職に自社から役員を派遣するなど、経営に関する意思決定にある程度影響を及ぼすことが出来るケースが該当します。これらの条件には一定の要件があるものの、総合的な判断が求められることから、会計監査人等との間で事前検討を行っておくことが重要です。

子会社に該当する場合、連結会計上は原則連結対象となります。反対にその他の関係会社の場合、持分法適用会社となる可能性が高いと言えます。

3.関係会社株式の減損

企業が保有する関係会社株式について、発行会社の財政状態が悪化し、実質的な価額が著しく低下した際には減損の検討が必要となります。この場合、株式時価の回復が見込めないと判断される場合には、相当な減額を行い、評価差額は当期の損失として計上します。

ただし、子会社や関係会社の株式に関しては、事業計画や市場動向を入手し、株式の価値回復の可能性が合理的に見込まれる場合には、すぐに減損を行わないという選択もあります。
例えば、事業拡大のために子会社や関係会社を設立した場合、会社設立後当面は赤字が出ることは珍しくありません。赤字が出れば財政状態は悪化しますので、投資後すぐに減損を行わなければならないというのは合理性に欠きますので、将来の回収可能性を説明することが出来れば減損を行う必要はないのです。

ただし、この回復可能性の判定にあたっては、計画が実行可能であり、信頼性の高いものであることが求められます。具体的には、業績回復までの期間が概ね5年以内である必要があり、さらに毎期見直しが必要とされています。
実務的には、この合理性を判定するのは会社自身と会計監査人になると思います。
そのため、減損を行わない判断を下す場合、会計監査人が納得のいく事業計画を提示することが必要になるでしょう。

4.連結会計上の取り扱い

連結会計上、関係会社に対する投資は、持分法によって親会社の財務諸表に反映されることが多いと思います。持分法を適用する場合、関係会社の業績は持ち分に比例して連結財務諸表に反映されることとなりますので、持分法適用会社となった以降の損益は毎期連結上取り込まれることとなり、業績の悪化は都度反映されていることとなります。

では、単体決算上減損が必要となるような場合であっても既に過去の損益は取り込んでいるため調整は不要かというとそうではありません。持分法適用会社に対して「のれん」を計上しており、まだその残高が残っている場合には「のれん」の減損が必要となる可能性があります。
この点、連結子会社と異なり、持分法適用会社には貸借対照表に「のれん」という形で資産が計上されていないことに注意が必要です。実はのれんの減損処理の検討が漏れないよう、単体上、関係会社株式の減損を行った場合には、連結上、のれんの減損がないかどうかも同時に検討を行いましょう。

単体決算上の関係会社株式評価損は、特別損失に計上されることが多いと思いますが、連結上の原則は、のれんの減損についても、「持分法投資損益」に含めて表示するものとされていますので、営業外費用となる点にも注意が必要です。

5.終わりに

関係会社株式の減損処理は、企業の業績に大きな影響を与える可能性があります。
対して、影響があるのは単体決算のみで、連結上の影響はないものと思っていると大きな誤算となってしまうかもしれません。持分法上ののれんを通じて、大きな損失が発生してしまう可能性がある点には注意が必要です。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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