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2024年09月04日
COLUMN

IPOに向けたエクイティファイナンスの活用法とエグジットについて ベンチャー企業、スタートアップ企業の資金調達とエグジットの方法

2024年9月4日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

IPOを目指す企業にとって、資金調達は重要なステップです。その中でもエクイティファイナンスは、スタートアップ企業にとっての生命線と言っても過言ではありません。

本コラムでは、エクイティファイナンスとデッドファイナンスの違い、スタートアップ企業におけるエクイティファイナンスの意義、そしてエグジットに関するポイントを解説します。

2.エクイティファイナンスとデッドファイナンス

(1)エクイティファイナンスの特徴

①エクイティファイナンスとは

エクイティファイナンスは、株式を発行して資金を調達する方法で、資本を提供する投資家は株主として企業の成長に参加します。返済義務がない資金調達方法であり、企業の財務リスクを軽減する一方で、企業は株主の期待に応える必要があります。
通常、スタートアップ企業へ投資を行う投資家は高い利益率を期待しています。

また、株式を発行するため、通常は投資方が議決権を得ることで経営に対する発言力を持ちます。
これを煩わしいと思うことがあるかもしれませんが、外部の目が入るということは客観的に経営戦略を評価してもらえるということでもありますので、メリットでもあります。

②デッドファイナンスとの比較

デッドファイナンスは、借入により資金を調達する方法で、当然ながら返済義務が伴います。
エクイティファイナンスと比較して、設備投資や短期的なキャッシュフローの改善には有効な反面、返済負担が企業の財務体質を圧迫する可能性があります。
株式を発行する必要がありませんので、議決権の分散が行われず、現在の株主が経営権を保持ことが出来ます。

3.スタートアップ企業にとってのエクイティファイナンス

(1)成長資金の確保

スタートアップ企業にとって、エクイティファイナンスは成長資金を確保するための重要な手段です。一般的にスタートアップ企業は設立後間もないことから、過去実績に乏しく、デッドファイナンスとの相性が良くありません。
デッドファイナンスにより資金調達を行うスタートアップ企業も存在しますが、高い成長性が武器となるスタートアップ企業にとっては、エクイティファインスとの相性が良いと言えるでしょう。
企業はこれらの資金を活用して、新規事業の開発や市場拡大を図ることができます。

(2)投資家とのパートナーシップ

エクイティファイナンスを通じて得られる投資家は、単なる資金提供者ではなく、企業の成長をサポートするパートナーとしての役割も果たします。スタートアップ企業では、事業上の関係性を強化するために重要な取引先に株主になってもらうこともあります。彼らのネットワークや経験を活用することで、スタートアップ企業のさらなる成長に役立てることが出来ます。

4.エグジットについて

エクイティファイナンスの話について、中には安易に返済義務のない「もらったお金」であると思われているケースがありますが、それは違います。
出資者はIPOなどを始めとした投下資本の回収を狙って投資を行っているのであり、そのエグジット(投下資本をどのように回収するかの出口戦略)についても意識しなければなりません。
ここでは、代表的なエグジットの方法を解説します。

(1)IPO(新規株式公開)

IPOは、エクイティファイナンスの代表的なエグジット戦略の一つです。
投資フェーズや上場時の株式市況にもよりますが、通常は高い利益率を確保することが出来ます。その反面、上場審査や監査を受けなければならず、達成までの道のりが長いことも特徴です。
IPOは投資家にとっては資金回収の機会であると共に、企業にとっては新たな成長フェーズへの移行でもあります。

(2)M&A(合併・買収)

スタートアップ企業のエグジット戦略には、IPOの他にM&A(合併・買収)もあります。
M&Aは対象企業が他社に買収されることで、株式を売却し資金を回収できる手段であり、IPOに比べ迅速に実行できることが特徴です。
しかし、それは当然、買い手との間で合意ができることが前提です。買い手によっては、デューデリジェンスを始めとした企業調査や条件交渉を伴いますので、成立までの期間が比較的短いというだけで、一定の期間は必要ですし、当然ながら取引が成立しない可能性もあります。
M&Aでは、株式を100%ないしは過半数取得されるケースが多く、そのような場合、最高意思決定機関である株主としての立場を失うことになります。

5.最後に

エクイティファイナンスは、スタートアップ企業にとって強力な成長のきっかけとなります。
むしろ、多くのスタートアップ企業にとっては、エクイティファイナンスによる資金調達は事業運営のための前提条件であると言っても過言ではありません。
その成功のためには戦略的な資金調達と、投資家との信頼関係が欠かせません。慎重な計画と市場の状況を見極める力が、成功への鍵となるでしょう。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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