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2025年12月22日
IPO-COLUMN-

ベンチャー企業向けの上場ターゲット市場の比較 東証グロース市場、名証ネクスト、福証QBoard、札証アンビシャスの上場基準を徹底比較

2025年12月25日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

1.はじめに

ベンチャー企業にとって上場は大きな節目であり、資金調達力の強化、企業の信用力の向上、知名度やブランド力の向上など、成長を加速させるための大きな転機となります。
このベンチャー企業の多くが目指す市場として東京証券取引所のグロース市場がありますが、同市場において維持基準が現行の「上場後10年後時価総額40億円以上」から、「上場後5年後時価総額100億円以上」へ引き上げが見込まれており、ターゲット市場の見直しを行う上場準備企業が増えています。

そこで本コラムでは、業歴が比較的短く、将来の成長性を主な武器とするベンチャー企業が上場を目指すのに適した市場として、「東証グロース市場」「名証ネクスト市場」「福証Q-Board市場」「札証アンビシャス市場」を取り上げ、それぞれの特徴と基準を詳しく比較解説します。


2.ベンチャー企業向けの市場

ベンチャー企業が上場を目指す市場に明確な制限はありませんが、創業から間もない企業にとって現実的にターゲットとすることが難しい市場や、想定する時価総額や企業の特性などによって、自ずと適した市場は限られてきます。
短期間での急成長を見込むベンチャー企業がターゲットとする市場について、各証券取引所は、東証グロース、名証ネクスト、福証Q-Board、札証アンビシャスなどの市場を用意しています。
各市場の上場基準や維持基準は、それぞれの市場で特色があり、特に地方証券取引所においてはそのエリアとの関連性を求めるものが多いのが特徴であるといえます。


3.ベンチャー企業向け市場の比較

(1) 東証-グロース市場

①市場の特徴

東証グロース市場は、将来的に大きな成長が期待される企業を対象に設置された市場です。
上場した企業は全国的な認知度を高められ、幅広く資金調達が可能であるというメリットがあります。一方で、上場の難易度は他の新興市場に比べて高く、開示義務や市場への説明責任が厳しく求められ、企業として高いコンプライアンス水準が求められることにも注意が必要です。
今後、維持基準が引き上げられる予定であり、一定期間内に相応の成長を達成できる見込みの企業に向いています。

②新規上場・上場維持基準

新規上場時の主要な基準及び上場維持基準(上場廃止基準に抵触する基準)は以下の通りです。
なお、新規上場や上場維持には他にも条件があり、特に新規上場時は市場の要求以外にも主幹事証券他審査、監査機関からの要請もあるため、以下の条件を満たしたからといって必ず上場(維持)が出来るわけではありません(以下の市場についても条件は同じのため本脚注はこの項のみに記載します)。

この辺りは主幹事証券を始めとした審査機関と足並みを揃えて進める必要があります。

基準項目 新規上場 上場維持
 株主数  150人以上  150人以上
 流通株式数  1,000単位以上  1,000単位以上
 流通株式比率  25%以上  25%以上
 時価総額  5億円以上  5億円以上
※上場後一定期間後の時価総額
10年後40億円以上(現行基準)
5年後100億円以上(2030年以降)
 収益基盤  該当なし  該当なし
 財政基盤  純資産額正  純資産額正

非常に特徴的なのが、時価総額の維持基準の中に上場後一定期間経過後、一定の時価総額を達成することを求めている点にあります。2030年よりこの基準が引き上げられる予定であり、上場5年後において時価総額が100億円以上に至っていることが求められる可能性が高まっていまう。現在よりもさらに短期かつ大規模な時価総額の達成を要求されます。
これは基準改定前に上場をした企業も例外ではなく、同維持基準が適用される見込みです。

③地域特性

地域制限はなく、原則として日本全国の企業が上場可能です。


(2)名証-ネクスト市場

①市場の特徴

名証ネクスト市場は、中部地域を中心に地域経済への貢献度が高い企業を対象とした市場で、中堅企業や地域に根ざしたベンチャー企業向けの市場といえます。投資家層も地元金融機関や地域投資家が主体であり、地域経済活性化という側面がありながらも、対象企業に明確な地域制限を設けていないことが特徴です。

②新規上場・上場維持基準

基準項目 新規上場 上場維持
 株主数  150人以上  150人以上
 流通株式数  500単位以上  該当なし
 流通株式比率  該当なし  該当なし
 時価総額  3億円以上  2億円以上
 収益基盤  該当なし  上場後4年目以降において、4年連続営業利益・営業CFが赤字
(継続企業の前提に関する事項を注記しない場合を除く)
 財政基盤  該当なし  純資産額正

③地域特性

地域密着型の市場ではあるものの、地域外からの企業に対する制限はありません。


(3)福証-Q-Board市場

①市場の特徴

福証Q-Boardは九州地域のベンチャー企業向けの市場で、比較的柔軟な上場基準を設けています。規模の小さい企業でも上場を目指しやすく、九州地域での認知度向上と資金調達には特に有効であるといえます。

②新規上場・上場維持基準

基準項目 新規上場 上場維持
 株主数  200人以上  100人以上
 流通株式数  500単位以上  該当なし
 流通株式比率  該当なし  該当なし
 時価総額  3億円以上  2億円以上
 収益基盤  直近1年間の利益計上  4期連続で営業損失及び営業キャッシュ・フローが赤字
 財政基盤  純資産額正  純資産額正

③地域特性

地域密着型の市場であり、九州周辺地域に本店を置く企業や、九州周辺地域での事業実績や事業計画のある企業に限定されています。
必ずしも本店を九州に置く必要はないとされているものの、地域上の制約があり、九州地域に所縁のない企業にとってはややハードルの高い市場であるといえます。


(4)札証-アンビシャス市場

①市場の特徴

札証アンビシャスは、北海道地域の新興企業を中心に設置された市場です。北海道内の企業の資金調達や地域内でのブランド構築支援を重視しています。

②新規上場・上場維持基準

基準項目 新規上場 上場維持
 株主数  100人以上  100人以上
 流通株式数  500単位以上  該当なし
 流通株式比率  該当なし  該当なし
 時価総額  該当なし  2億円以上 ※1
 収益基盤  営業利益正
(正でない場合収益向上が期待できること)
 営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が正 ※2
 財政基盤  純資産額1億円以上 ※3  純資産額正

※1:上場申請事業年度の翌事業年度から起算して3事業年度の末日において。
※2:上場申請事業年度の翌事業年度から起算して5事業年度の末日において。
※3:最近2年間の営業利益が連続して50百万円以上の場合は、「正」であること。

③地域特性

地域密着型の市場であり、北海道に関連のある企業に限定されています。
本店が北海道にあるという限定は無いものの、何らかの関連がある企業を対象としていることが求められており、北海道地域に所縁のない企業にとってはややハードルの高い市場であるといえます。


.各市場のまとめ

先述の通り、各市場でベンチャー企業向けの市場を用意していますが、それぞれの市場に新たに上場するため、また、上場を維持するための基準が異なります。
これらのベンチャー企業が各市場への新規上場を検討する際の基準項目についてまとめると以下のようになります。
分かりやすいよう難易度を記載していますが、あくまでベンチャー向け市場間の相対評価であり、私見によるものであることにご留意ください。

次に、新規上場後の継続的な市場維持を視野に入れた、各市場の上場維持基準について、新規上場基準と並べてまとめた表は以下の通りです。長期的な視点での市場選択にお役立てください。


.終わりに

本コラムでは各市場の特性・基準を徹底比較しました。
東証グロース市場の基準変更を踏まえ、これから自社の成長戦略と各市場特性を照らし合わせた市場選択が重要となります。
本記事が上場市場の検討に役立てば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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