IPOにおけるショートレビューとデューデリジェンスは何が違う? 上場準備で受ける企業調査の位置づけと時期
2026年11月5日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
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1.はじめに
IPO(新規株式公開)は企業にとって大きな転換点であり、上場を目標としている存在します。そのような企業では、ショートレビューやクイックレビュー、短期調査、デューデリジェンスなどといった企業調査を受けたことがあるのではないでしょうか。
初めてこのような調査を受ける場合には、その目的が理解できないことがあるかもしれません。ですが、これらはIPOにおいて非常に重要なプロセスであり、中には省略できない手続もあります。本コラムでは、これらの違いとその位置づけについて解説します。
なお、本稿では、対象とする市場をTOKYO PRO Marketを除く東証の各市場(プライム、スタンダード、グロース)を前提としております。機関投資家向け市場であるTOKYO PRO Marketでは、上場に関わる条件や書類名などが相違する点がありますのでご注意ください。
2.ショートレビューとデューデリジェンスの違い
ショートレビューとデューデリジェンスは、どちらも企業調査に関する業務ですが、その目的と内容には違いがあります。
ショートレビューは、主に会計監査を担当する監査法人によって行われ、上場に向けた課題整理を目的としています。調査範囲は幅広く、省略されることはほとんどありません。
デューデリジェンスは、通常、特定の分野を絞って行われます。特にリスクの高い分野について行われることが多く、その実施者も監査法人とは限りません。調査分野に強い社会保険労務士や弁護士、公認会計士などの専門家によって実施されるのが一般的であり、必ず実施しなければならないというものではありません。
3.ショートレビューの位置づけ
(1)ショートレビューとは
ショートレビューとは、企業がIPOを目指す初期段階で受ける必要のある企業調査です。クイックレビューや短期調査、課題抽出調査などと呼ばれることもあります。
IPOに向けた活動が本格化する際、まず初めに行われるのがショートレビューと言っても過言ではないでしょう。ショートレビューを受ける目的は、主に企業会計上の課題や業務プロセスを調査し、IPOプロセスを進めるうえでのリスクや改善点を洗い出すことにあります。
(2)ショートレビューの実施者
ショートレビューは、主に監査法人又は公認会計士によって行われます。
中でも、可能な限り直前々期(N-2期)からの監査を行ってくれる監査法人に依頼します。
ショートレビューには、監査法人側が対象会社の監査を行うことができるかどうか(監査契約受嘱の可否)を審査している側面もあります。そのため、もしも監査を担当する監査法人等とは違う者がショートレビューを行う場合、ショートレビューを受け直さなければならなくなる可能性があります。
また、上場準備の監査は特殊な面が多く、監査を行う側にも一定のノウハウが求められます。
そのため、個人の公認会計士事務所や、上場準備をメインターゲットとしていない中小監査法人は、上場準備企業の監査(通称、準金商法監査といいます)を受嘱していないケースも多くあります。ショートレビューを依頼する監査法人が、最終的に直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)の監査を受嘱できるかどうかは、事前に確認しておきましょう。
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(3)ショートレビューの重要性
原則として、ショートレビューは省略されることがありません。
ショートレビューは、企業にとって上場に向けた課題やリスクを洗い出す機会であるとともに、監査法人等にとっても監査契約の受嘱可否を検討する場を兼ねているため、双方にとって非常に重要なプロセスなのです。
4.デューデリジェンスの位置づけ
(1)デューデリジェンスとは
上場準備企業におけるデューデリジェンスは、基本的に特定の分野の潜在的なリスクや問題点を明らかにすることを目的として行われます。IPOでデューデリジェンスを活用するのは、自発的に調査を受けるというよりも、主幹事証券会社からの要請による場合が多いのではないでしょうか。これは、上場審査の過程で、主幹事証券会社が外部専門家の見解を得ておきたいという側面もあります。
なお、デューデリジェンスは、IPOに限らずM&Aや資本提携等の場で行われることがあります。このような場合、財務デューデリジェンスの持つ意味は大きいですが、上場準備の場合には、既に監査法人等のショートレビューが行われているため、財務以外の分野でデューデリジェンスを受けることが一般的です。
(2)デューデリジェンスの実施者
デューデリジェンスは、主に外部の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、社会保険労務士、その他コンサルタント)によって実施されます。
そのためデューデリジェンスを受ける分野(リスクの高い分野)が労務管理であれば社会保険労務士や弁護士、法務分野であれば弁護士によるデューデリジェンスのように、各分野の専門家の調査を受けることとなります。
(3)デューデリジェンスの必要性
上場準備のためのデューデリジェンスは、ショートレビューに比べると実施頻度は低いと言えますが、重要性が低いわけではありません。
会社によってリスクは様々な分野に潜んでおり、リスクの高い分野に絞ってデューデリジェンスを受けることは、上場審査においても大きい意味を持ちます。
経験則によりますが、特に人事労務分野でのリスクを抱えているケースは多いといえます。
5.終わりに
ショートレビューとデューデリジェンスは、IPOプロセスにおいてそれぞれ異なる役割を果たします。
上場準備を始めた企業では、ショートレビューは受けたけれど、それ以外には調査を受けたことはないというケースも多いと思いますが、特に人事労務に関して不安が残る場合や、特定の契約に関して特別なリスクがある場合には、外部専門家のデューデリジェンスを受けることは有効です。
上記以外にも、上場準備では関係各所の継続的な調査を受けることになりますので、会社の課題点は早めに認識し、対処を進めていく姿勢が非常に大切です。最後までお読みいただきありがとうございました。本コラムが、上場に向けた会社のステップアップの一助となれば幸いです。
当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。
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