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2024年07月11日
IPO-COLUMN-

IPOを目指す企業のN-3期(直前々々期)以前における内部統制の強化方針 直前々期よりも前の内部統制の強化方針

2024年7月8日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

 

1.はじめに

企業が株式公開(IPO)を目指す際、内部統制の強化は避けて通れません。
IPOを目指す企業では、上場審査や会計監査の過程で内部統制の強化が必要となることは珍しくありません。反対に、筆者の経験上、上場準備を開始してから内部統制が変わることなく上場まで至るケースは極めて稀であると言えます。

この内部統制の強化について、言葉で言うのは簡単ですが、実際には相当の手間と時間を要します。
強化を図ったつもりが社内を混乱させてしまい、反対に機能しなくなってしまったなんていうこともありえます。
このような内部統制の強化について、上場準備が本格化するN-2(直前前期)からスタートするのではなく、なるべく早い段階から内部統制の整備、運用環境を整えていくのが無難でしょう。

本コラムでは、内部統制の重要性や強化方法、そしてIPOまでの各ステージに応じた最適なタイミングについて詳述します。

2.内部統制の重要性

(1)定義

内部統制とは、企業が業務の有効性と効率性を確保し、財務報告の信頼性を高め、法令遵守を徹底するためのプロセスや仕組みを指します。定義として解説すると少々分かりにくい言い回しとなってしまいますが、もしも分かりにくい場合には、企業自身で不正や誤りを防止する機能であり、企業内部の自浄能力であると考えましょう。

(2)目的

内部統制の主な目的は、企業のリスク管理から不正やミス(誤り)を防止、発見することにあります。
これにより、企業は不正やミスを防ぎ、正確な財務報告を行うことができるようになります。特にIPOを目指す企業にとっては、内部統制の強化が投資家に対する信頼感を醸成し、企業価値を向上させるため避けて通れません。

3.IPOまでのステージに応じた内部統制の強化

上場準備における内部統制の強化は非常に重要ですが、全ての内部統制を一度に十分な水準に高めることは非常に困難です。内部統制の種類によりますが、内部統制の強化には人員強化が求められるものが多いためです。

代表的な内部統制の機能に一つの業務を別の担当者が確認するダブルチェック体制がありますが、これを実現するためには最低でも二人の担当者が必要になります。内部統制強化のために担当者を採用する場合であったとしても、新しい担当者は業務内容を理解するのに一定期間は必要ですし、そもそも長らく人手不足の続いている上場準備業界では採用すら困難ということもありえます。

当然、上場の検討を開始した時点で内部統制が十分な水準を満たしていることが望ましいですが、現実はそうはいきません。実務上、多くのケースでは段階を追って内部統制のレベルを高めていくことになりますが、N-2期(直前前期)から着手していると、そもそも時間が足りなくなるというリスクがあるのです。

4.N-3期(直前々々期)以前とは

N-3期(直前々々期)以前とは、IPOを予定する年の直前前期以前にあたる期間を指します。
上場までの期間は、年度ごとに直前前期(N-2)、直前期(N-1)、申請期(N期)と表現されます。上場準備が本格化するのがN-2期(直前前期)になり、N-3期以前はこのN-2期よりも前の期間をいいます。

上場準備が本格化する直前前期(N-2期)からは業務量が大きく増大し、人員体制が十分でない場合には管理体制が混乱してしまうこともあります。これは決して稀なケースではありません。人材不足の現代社会では、むしろ人員が不足するケースの方が多いのです。
そのため、直前前期(N-2期)以前に内部統制の強化が図っておくことは非常に重要なのです。

5.N-3期以前の内部統制の強化方針

(1)特にリスクの高い項目への対応

上場審査上クリティカルな問題となる可能性があるような、特にリスクの高い項目へは早めに対処しておく必要があります。
証券会社の上場審査や監査法人の会計監査の項目は多岐に渡りますが、その指摘事項にも重要度があります。
例えば、反社会勢力でないことの確認(いわゆる反社チェック)や、関連当事者取引の整理は重要性が高いと言えるでしょう。中でも反社会勢力との取引や法令違反は、上場の可能性に大きく減点が入りますので、存在するだけで上場が遠のいてしまいます。

(2)基本的な内部統制の整備

IPO準備の初期段階では、基本的な内部統制を整備することも重要です。
具体的には、経理体制や人事体制の構築、職務分掌や職務権限、稟議体制などのワークフローの整備、中長期経営計画の策定や予算体制の整備等です。
ただし、上場準備期間中は担当者の増員や交代、異動も多くなりがちで、内部統制自体が変化することも珍しくありません。そのため、最初から細かいルールを作り上げるのではなく、重要なポイントを押さえたルール作りが重要です。

(3)対処に時間の掛かる項目への取り組み

上場準備で対処すべき課題には時間を要するものがあります。
このような課題は直前前期(N-2期)以降に対処が間に合わない可能性がありますので、早い段階で検討、対応を開始すべきです。
また、その最たる例は上場準備に向けた人材の確保です。
近年、人材不足の時代に入っていますが、上場準備における人材は高い専門能力を必要としており、人材の確保が難しくなっています。

資金的な余裕も考慮する必要がありますが、現状、いつでも人材を確保できるような環境にはありませんので、必要な人材は積極的に確保しておくことをお勧めしています。

6.まとめ

内部統制の強化は、IPOを目指す企業にとって避けて通れない課題です。
一気にリソースを投入し、課題を解決してしまうことが出来るのであれば問題はありませんが、そもそもリソースが不足しがちな上場準備企業では現状を踏まえた内部統制の強化施策が求められます。

内部統制の構築、強化に対して人的リソースに限りのある環境は逆風であると言わざるをえませんが、だからこそ早い段階から準備をしておくことが有効です。
内部統制の強化は、企業の長期的な成長と安定を支える重要な要素であり、企業として十分な地盤が求められるということを認識しましょう。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。

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