固定資産とは 固定資産の意味と固定資産に関する会計処理の概要
2023年12月6日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼
1.固定資産とは/会計処理の概要
固定資産とは、大雑把にとらえると長期間使用する(又は効果の及ぶ)資産をいいます。
この長期間の目安は、一年間を超えるかどうかを基準とします。
また、固定資産には減価償却が求められるものが多く存在しますが、その償却期間(耐用年数)は本来使用期間を用いるのが理論上は望ましいといえます。
ただ、一口に使用期間といっても、本来使用期間は使い方や使用目的によって変わり、極端な話、同一企業で同一資産を使ってたとしても使用期間は同じにはなりません。
個別に資産の使用期間を正確に見積もることが出来るかといえば、非常に煩雑であり、且つ、どうしても恣意性が入ることになってしまうことから、ある程度画一的な会計処理が求められることとなります。
そのため、固定資産に関する一定のルールが定めれており、主に税務上の取り扱いに従うのが一般的です。
(1)固定資産の範囲
広義に固定資産とは、有形固定資産、無形固定遺産、投資その他の資産に分類されます。
今回は、投資その他の資産は少し性格が異なるため対象とはせず、有形固定資産及び無形固定資産の説明を対象としています点、ご留意ください。
具体的な有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産への分類は判断の難しい資産もありますが、大きく①使用目的、②現物の有無で判定をするとイメージが付きやすいです。
【参考】固定資産の分類
(2)有形/無形固定資産の会計処理概要
一部を除き、有形固定資産、無形固定資産のほとんどは資産計上を行った以降、減価償却を通じて費用処理を行います。減価償却を行わないもので代表的なものは土地ですが、これは使用による価値下落が無いためです。
そのため、通常の固定資産は減価償却を通じて、価値(貸借対照表計上額)が下がって行くことになります。
会計上、固定資産を買ってきたときの金額を取得価額といい、減価償却により価値が下がった部分を減価償却累計額、下がった後の価値を帳簿価額といいます。
2.固定資産の種類
(1)有形固定資産
まず有形固定資産とは何かを大まかに説明すると、一年を超えて使用する資産で、現物があり、ある程度金額の大きいものを有形固定資産といいます。
長期間使用可能な資産は多岐に渡りますが、実務上は少額な資産は費用計上してしまうことも多く、金額も判定に影響すると考えましょう。
代表的な有形固定資産には以下のようなものがあります。
✓ | 土地 | 土地本体。事務所や工場などの底地など。 |
✓ | 建物 | 建物本体。事務所や工場などの建築物。 |
✓ | 建物附属設備 | 建物に付随する電気設備や給排水設備など。 |
✓ | 構築物 | 建物以外の造作物(主に移動出来ないもの) |
✓ | 機械及び装置 | 主に工場等で使われる生産設備等の機械など。 |
✓ | 車両運搬具 | 一般的な自動車、事業用のトラックなど。 |
✓ | 工具器具備品 | 棚、机、パソコンなど幅広く、上述の資産に比べ小型なことが多い。金型なども含まれる。 |
✓ | 建設仮勘定 | 建設中(未完成)の支出。最終的に上記勘定(本勘定という)等に振り替えられる。 |
(2)無形固定資産
現物があるものが有形固定資産となるのに対し、現物が存在しない場合でも長期間効果を得られる資産があります。
これらの一部は無形固定資産として資産計上しますが、無形固定資産として計上出来る資産は定義が決まっており、ある意味で限定されています。
例えば、ソフトウェアやのれん、特許権などの権利関係が無形固定資産にこれに該当します。
✓ | ソフトウェア | 会計ソフト等のプログラム。購入した物だけでなく自ら開発したものも含む。 |
✓ | のれん | ノウハウ、ブランド力等、定数化するのは難しいが収益源となるもの。 |
✓ | 特許権等 | 特許権や実用新案権などの権利関係。 |
3.固定資産の減価償却
前述の通り、有形固定資産、無形固定資産は一部の場合を除き、毎年その一部を費用化し、帳簿上の価値を下げていきます。これが減価償却と呼ばれるもので、資産の購入後、使用を通じて価値が落ちていくことを表しているとイメージしてもらうと良いと思います。
また資産によって使える期間が異なるため、その種類ごとに何年間で償却を行うか目安があります。
この償却を行う期間を耐用年数といい、一般的には税務上の耐用年数表を参照します。
(1)減価償却の方法
減価償却にはいくつか方法がありますが、特に実務上重要なのは「定額法」と「定率法」となります。ほとんどの場合、減価償却はこの二つの方法で行われています。
また、固定資産の使用できる期間はそれぞれ異なるため、何年間で償却を行うか、耐用年数を決めて減価償却を行います。
【参考】減価償却計算の主な計算要素
(2)減価償却の頻度
減価償却は税務申告だけを考えるとすると、一年に一度行えば足りますが、月次決算や四半期決算を行う場合にはその頻度で行う必要があります。
実務上は、月次では予算値(予定額)を計上しておき、一定期間で実績値に置き換えるという処理も行われることもあります。
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