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2024年06月05日
企業会計-REPORT-

【業種別会計】 収益認識基準と工事進行基準の関係 工事進行基準の廃止、今後の取り扱い

2024年6月5日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼


1.工事進行基準(工事契約会計基準)の取り扱い

2021年4月以後に開始する事業年度から収益認識基準が強制適用され、これに伴い工事契約会計基準は廃止されました。廃止と聞くと仰々しく感じるかもしれませんが、会計処理の実質が大きく変わったわけではありません。本稿では、従来の工事進行基準の考え方を振り返りながら、収益認識基準における工事契約の会計処理を解説します。

なお、本稿では解説のため、正式な会計基準よりも表現を簡素化している部分がありますので、その点ご容赦ください。

(1)工事進行基準とは

工事進行基準とは、工事などの主に請負契約に適用される会計処理で、工事の完成前に、その進捗率(工事の出来高の割合)に応じて収益を計上する方法をいいます。反対に、工事の完成・引渡時に収益を一括で計上する方法を工事完成基準といいます。

この進捗率の算定方法としては、決算日までに発生した工事原価の累計額を、見積られた工事原価総額で割って算定する「原価比例法」が代表的です。 また、工事進行基準は建設業のほか、ソフトウェアの受託開発などにも適用されていました。

(2)工事進行基準の適用範囲

工事進行基準は、以下の要件をすべて満たす場合に適用されます。これをまとめて「成果の確実性が認められる」といいます。

収益総額の信頼性をもった見積り注文書の受領等により受注金額が確定している等
原価総額の信頼性をもった見積り実行予算により対象案件の原価総額の見積りを行っている等
決算日における進捗度の信頼性をもった見積り実行予算により原価発生進捗が把握可能等

上記のいずれか一つでも要件を満たさない場合、工事完成基準によらなければなりません。

(3)法人税法の取り扱い

法人税法上、工事進行基準は廃止されておらず、従来から変更はありません。法人税法上は、以下のすべてを満たす工事(これを「長期大規模工事」といいます)について、工事進行基準の適用が義務付けられています。

工事の着手日から、契約で定められた目的物の引渡期日までの期間が1年以上であること
請負金額が10億円以上であること
請負金額の2分の1以上が、目的物の引渡期日から1年を経過する日後に支払われることとされていないこと

会計上は見積りの確実性(成果の確実性)で判定するのに対して、税務上は工事の期間や金額といった規模で判定するという違いがあります。判定の方向性が異なるため一概には言えませんが、10億円以上という金額基準があるため、通常、税務上の強制適用の範囲は会計上よりも限定的と考えられます。

なお、長期大規模工事に該当しない工事であっても、確定した決算において工事進行基準により経理した場合には、税務上も工事進行基準によることが認められます。また、長期大規模工事に該当する場合でも、事業年度終了時において着手日から6か月を経過していないものや、進捗割合が20%未満のものは、その事業年度では収益・費用を計上しないことも認められています。


2.収益認識基準の取り扱い

収益認識基準(収益認識に関する会計基準)は2018年に公表された会計基準であり、工事に関する収益だけではなく、収益認識全般に適用されます。上場会社や会社法上の大会社など、監査を受ける会社には2021年4月以後に開始する事業年度から強制適用されており、中小企業では引き続き従来どおりの会計処理によることも認められています。

(1)収益認識基準の概要

収益認識基準では、収益計上まで以下の5つのステップで検討を行います。これは工事収益に限らず、すべての収益に共通します。

契約の識別顧客との契約を識別する(契約の形態は書面に限らず、口頭や取引慣行によるものも含まれる)
履行義務の識別契約に含まれる履行義務(企業が顧客に何を提供するかという約束)を識別する
取引価格の算定取引価格を算定する
取引価格の配分③で算定した取引価格を、②で識別した履行義務に配分する
収益の認識履行義務の充足に応じて収益を認識する

工事に関する収益認識で特徴的なのは「⑤収益の認識」です。履行義務の充足のパターンは「A.一定の期間にわたり充足される履行義務」と「B.一時点で充足される履行義務」に分類されます。工事の性質にもよりますが、工事契約では前者に該当するケースが多いといえるでしょう。

(2)一定期間にわたり充足される履行義務の判定基準

「A.一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当する場合、従来でいうところの工事進行基準に類する会計処理を行うこととなります。反対に、「B.一時点で充足される履行義務」に該当する場合は、従来でいうところの工事完成基準に類する会計処理となります。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合に「A.一定の期間にわたり充足される履行義務」に分類されます。

企業が義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する
企業が義務を履行するにつれて資産が生じ、または資産の価値が増加し、その資産を顧客が支配する(顧客の土地の上に建物を建設する場合など)
企業が義務を履行することにより、他に転用できない資産が生じ、かつ、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している

Aに該当する場合には、進捗度を見積り、その進捗度に基づいて一定の期間にわたり収益を認識します。進捗度の見積りには、発生した原価に基づく方法(従来の原価比例法に相当する方法)などが用いられ、この点も工事進行基準と大きくは変わりません。

ただし、工事期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することも認められています。

(3)原価回収基準

以下の2つの要件をいずれも満たす場合には、「原価回収基準」により収益を認識します。

①進捗度を合理的に見積もることができないこと
②発生する費用(原価)の回収が見込まれること

原価回収基準では、決算日までに発生した原価のうち、回収されると見込まれる部分と同額を収益として認識します。これは従来の工事契約会計基準にはなかった、収益認識基準に特有の会計処理です。例えば、発生原価をすべて発注者に請求できることが契約に定められている場合には、決算日までに発生した原価と同額の収益を計上することとなります。従来であれば工事完成基準によっていたケースでも、完成前から収益が計上される(ただし利益はゼロとなる)点が特徴です。

なお、契約の初期段階では進捗度の見積りが難しいことが少なくありません。そこで、契約の初期段階に限り、原価回収基準を適用せず、進捗度を合理的に見積もることができる時から収益を認識することも認められています。

工事進行基準と収益認識基準の全体的な比較を以下にまとめました。


3.終わりに

本稿では、従来の工事進行基準と収益認識基準における工事契約の会計処理を解説しました。収益認識基準の適用に伴い、建設業においても様々な検討が行われましたが、根本的な会計処理が大きく変わったわけではありませんので、必要以上に難しく考えず、新たな基準の考え方を押さえていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。本稿が皆様の実務のご参考となれば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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当コラムの意見にあたる部分は個人的な見解を含んでおります点にご留意ください


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