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2026年09月18日
企業会計-COLUMN-

新リース会計基準でシェアオフィスはオンバランス対象になるのか 契約形態別の会計処理と判断ポイント

2026年9月18日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼 

1.はじめに

新リース会計基準の適用に向けて、オフィス契約の会計処理をどのように見直すべきかは、多くの企業にとって実務上の重要テーマであるといえます。
近年は、シェアオフィスやコワーキングスペースなど、働く場所の契約形態が多様化しており、会計上はリースを含む契約か否か判断に迷うケースもあるのではないでしょうか。

本記事では、新リース会計基準の概要を確認したうえで、シェアオフィスがオンバランス対象になり得るか、契約形態ごとの判断方法を実務目線で解説します。

なお、本記事は筆者の私見も含まれており、実際の会計判断には会計監査人その他の専門家と協議のうえ決定することをお勧めします。


2.新リース会計基準とは何か

新リース会計基準は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を中心とする新しい会計基準です。原則として、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する年度からの早期適用も認められています。

主な対象は、日本基準を適用する上場会社や会社法監査対象会社などです。IPO準備企業も、上場後の開示や監査対応を見据えると、早い段階で契約の棚卸しを進める必要があります。

従来の日本基準では、借手側のオペレーティング・リースについて、貸借対照表に資産および負債を計上しない処理が広く行われていました。新リース会計基準では、借手のリースについて、原則として使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する、いわゆるオンバランス処理を行います。

この変更により、これまで賃借料として費用処理していた契約でも、原則がオンバランスとなるため、契約内容によって貸借対照表へ資産負債の計上が必要になります。使用権資産とは、借手が一定期間にわたり原資産を使用する権利を表す資産です。リース負債は、その使用権に対して将来支払うリース料の現在価値を基礎として計上されます。

オフィス契約は、新リース会計の影響を受けやすい領域です。
通常の事務所賃貸借契約はもちろん、専用区画、専用個室、固定席、会議室利用、受付サービス、通信環境、什器利用などが組み合わされた契約では、どの部分がリースを構成し、どの部分がサービスに該当するのかを検討する必要があります。

特にシェアオフィスは、スペース利用とサービス提供が一体となっていることが多く、契約書の名称だけで会計処理を判断できません。月額利用料の内訳、利用できる区画、運営会社による座席変更権限、利用者の排他的利用の有無などを確認することが実務上の出発点となります。


3.シェアオフィスは新リース会計基準の対象になるのか

シェアオフィス契約がリースに該当するかは、契約名ではなく実態で判断します。
新リース会計基準では、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含むと考えます。

したがって、契約書が「賃貸借契約」となっていなかったとしても、実質的に特定の区画や部屋を一定期間利用者が支配している場合には、リースに該当する可能性があります。その場合、借手側では原則として使用権資産とリース負債を計上するため、オンバランス対象となり得ます。

シェアオフィスにおいて最初に検討すべき点は、特定された資産があるか否かです。
たとえば、契約上、特定の個室番号、専用区画、固定席番号が明記され、利用者がその場所を継続して使用できる場合には、特定された資産がある可能性が高く、リース取引と判断されやすくなります。

一方、フリーアドレス型(特定の席を定めず、空いている席を都度利用する形態)のシェアオフィスや、運営会社が利用者に事前通知なく座席や利用場所を変更でき、実際に代替スペースを柔軟に提供できる場合には、特定された資産がない可能性が高く、リースを含まないと判断されやすくなります。

次に、利用者がその資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受しているかを確認します。
専用個室を自社の執務スペースとして独占的に使い、第三者が通常利用できない場合には、利用者が経済的利益を享受している可能性が高いと言えます。

これに対し、共用ラウンジや空いている座席を都度利用する契約では、利用者は施設全体の一部サービスを受けているにとどまり、特定された資産の経済的利益をほとんどすべて享受しているとはいえない可能性が高いでしょう。

最後に、利用者がその資産の使用方法を指図できるかを確認します。専用個室について、利用者が執務、保管、社内会議などの用途を一定の範囲で決定でき、運営会社が日常的な使用方法に関与しない場合には、使用を指図する権利が利用者にあると判断するのが自然です。

一方、運営会社が利用時間、利用場所、利用方法を強く管理し、利用者は空席やサービスをその都度利用するだけである場合には、使用を指図する権利が運営会社側に残っていると考えられます。


4.シェアオフィスの具体例別の判断ポイント

フリーアドレス型のシェアオフィスでは、利用者が空いている席をその都度利用し、特定の席や区画を排他的に使えないことが一般的です。この場合、利用者が得ているのは、特定された資産の使用権というより、施設利用サービスや執務環境の提供を受ける権利に近いと考えられます。

そのため、通常はリースとしてオンバランス処理するのではなく、利用料をサービス費用として処理する方向で検討することになると思われます。ただし、契約上はフリーアドレスでも、実態として特定区画を継続的に専用利用している場合には、判断が変わる可能性があります。契約書と実際の利用状況を合わせて確認することが重要です。

専用個室は、シェアオフィスの中でもリースに該当する可能性が比較的高い契約形態です。特定の部屋番号が割り当てられ、契約期間中は利用者が排他的に使用でき、運営会社が実質的に他の部屋へ自由に入れ替える権利を持たない場合には、特定された資産の使用を支配していると判断されやすくなります。

この場合、借手側では、原則として使用権資産とリース負債を計上する会計処理を検討します。月額利用料に受付、郵便受取、インターネット、清掃、什器利用などが含まれていることも多いため、リース部分とサービス部分を区分できるか、重要性を踏まえてどのように処理するかを確認する必要があります。

固定席契約は、専用個室よりも判断が難しい形態です。席番号が特定され、利用者が契約期間中その席を継続利用できる場合には、特定された資産があると考えられる可能性があります。

一方で、運営会社が必要に応じて同等の席へ変更できる権利を持ち、その代替権が実質的である場合には、特定された資産がないと判断されることもあります。固定席という名称だけでなく、座席変更条項、利用者の専用性、荷物の常置可否、アクセス権限などを確認することも重要です。

固定席がリースに該当する場合には、専用個室と同様に使用権資産とリース負債の計上を検討します。リースに該当しない場合には、通常、利用料を期間に応じて費用処理することが考えられます。

シェアオフィス契約には、会議室の時間利用、受付対応、郵便物受取、電話応対、Wi-Fi、複合機、ドリンクサービスなどが含まれることがあります。これらは通常、特定された資産の使用権ではなく、サービス提供に該当する場合が多いと考えられます。

ただし、専用個室の利用と会議室利用が一体で月額料金に含まれている場合には、契約対価をリースを構成する部分とリースを構成しない部分に分けて考える必要があります。実務では、金額的重要性、契約書上の内訳、請求書の明細、社内管理上の区分可能性を確認し、会計監査人等の専門家とも早めに協議することが望まれます。


5.終わりに

シェアオフィス契約が新リース会計基準の対象になるかは、契約名ではなく、特定された資産の使用を支配する権利があるかによって判断します。フリーアドレス型はサービス契約に近い場合が多い一方、専用個室や一部の固定席契約では、リースに該当し、オンバランス対象となる可能性があります。

判断に迷う契約が多い場合には、早めに専門家や監査法人へ相談することをおすすめします。最後までお読みいただきありがとうございました。本記事が、シェアオフィス契約に関する新リース会計基準対応の一助となれば幸いです。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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