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2026年07月17日
企業会計-COLUMN-

新リース会計基準における簡便法を整理 短期リース、少額リース、現在価値計算(利子込み法、利息の定額配分法)その他の特例を解説

2026年7月17日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

新リース会計基準の適用が近づくにつれ、経理実務では契約の洗い出しや現在価値計算、注記対応などの負荷増加が意識されています。そのため、まずは原則処理だけでなく、どの簡便法や例外処理が残るのかを早い段階で整理しておくことも有効です。
本コラムでは、新リース会計基準における簡便法・例外処理の取扱いをまとめます。

なお、本コラムでは、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を「新リース会計基準」と呼びます。特に説明の無い限り、借手の会計処理の解説を行っています。


新リース会計基準の大きな特徴は、借手が従来のようにファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分ごとに会計処理を分けるのではなく、原資産を使用する権利そのものに着目して、使用権資産とリース負債を計上する考え方へ移った点です。従来はリースをオペレーティング・リース、ファイナンス・リースに区分の上で会計処理を検討していましたが、新基準では、契約により一定期間にわたって資産を使用できる権利が移転しているかという観点がより重視されます。

このアプローチ変更により、従来の実務では通常オフバランス処理されていたオペレーティング・リースも、借手では原則としてオンバランスの対象になります。これが実務上もっとも影響の大きい変更点であるといえます。使用権資産とリース負債を計上する以上、これまでオペレーティング・リースに該当していた契約件数の多い企業ほど、対象契約の把握、データ整備、会計システム対応などの負担が増えやすくなります。

さらに、基準全体の考え方が使用権モデルへ組み替わったことにより、リース期間の見積り、指数やレートに応じて決まる変動リース料の扱い、契約条件変更時の見直しなど、他にも複数の変更点が存在します。全ての変更点を抑える必要はありませんが、各社に関わりの有る点は事前に把握しておくのが良いでしょう。


新リース会計基準では、借手は原則としてリース開始日に使用権資産とリース負債を計上します。
繰り返しになりますが、従来の実務では通常オフバランス処理されていたオペレーティング・リースも、この原則の対象に含まれます。まず、原則がオンバランス処理であると考えると良いでしょう。

①短期リースの取扱い

短期リースは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないリースです。この要件を満たす場合、借手は使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます。なお、原資産の科目またはグループごとに選択することが出来ます。

②少額リースの取扱い

少額リースも、オンバランスの例外として残ります。少額リースの判定は、大きく三つの基準で整理することができます。第一に、新品時の原資産の価値がおおむね5,000米ドル程度以下であるかという絶対額の考え方です。第二に、自社が通常の購買取引で採用している固定資産の計上基準に基づき、少額資産として費用処理する範囲を基礎に判定する方法です。第三に、契約1件当たりのリース料総額の重要性に着目する方法です。最後の基準は旧300万円基準の基本概念を引き継いだものですが、新基準上は一律に300万円で固定されるものではなく、各社の事業内容や規模に応じて判断する必要があります。詳細な説明は別記事に譲りますが、小口契約まで一律にオンバランスしなくてよい余地が残されている点は、実務上重要です。

少額リースの取扱いについては以下の記事で別途解説を行っておりますので、詳細はこちらを参照下さい。

新リース会計において「300万円基準」は使える? 少額リースをめぐる不安と実務対応のポイント


これらの簡便法は、未経過の借手のリース料の期末残高が、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合で10パーセント未満である場合に適用できます。以前は所有権移転外ファイナンス・リース取引に対する簡便法でしたが、新リース会計基準では、使用権資産とリース負債を計上する単一の会計処理モデルへ変わったことにより、原則としてオンバランス対象となるリース全体を前提に適用を検討できるようになりました。

借手のリース料は原則として利息相当額部分と元本返済額部分に区分して処理しますが、使用権資産総額に重要性が乏しい場合には、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法を適用できます。この場合、使用権資産及びリース負債は借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみを計上します。オンバランスされる資産の現在価値計算において最も業務負荷を下げることの出来る簡便法であると言えるでしょう。

もう一つの簡便法は、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法で配分する方法です。原則法である利息法では、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定しますが、定額配分法であれば各期の費用計算を平準化しやすくなります。割引計算そのものは行うものの、その後の各期配分を簡潔にできる点に特徴があります。
(1)の利子込み法に比べると実務負担はあるものの、従来基準で定額配分法を採用している企業にとっては継続適用が可能であり、計算方法を変えずに済むというメリットもあります。


契約にリースとそれ以外のサービスが一体で含まれている場合、原則として借手はリース構成部分と非リース構成部分を区分し、リース構成部分のみを使用権資産及びリース負債の対象とします。他方、一定の場合には、リース構成部分とこれに関連する非リース構成部分を区分せず、まとめてリースを含むものとして処理する簡便的な取扱いを選択できます。

原則として、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金は現在価値で評価し、実際の支払額と当初時価との差額を使用権資産の取得価額に含めます。また、将来返還されない建設協力金等や返還されない敷金も、使用権資産の取得価額に含めることが求められています。
つまり、単に建設協力金等を別建ての資産として処理するだけではなく、返還されない部分や時価との差額については、リース契約に付随して資産を使用するための対価として使用権資産に反映させるのが原則的な取り扱いです。

この点、返済期日までの期間が短いものなど影響額に重要性がない場合には、将来返還される差入預託保証金について現在価値評価を行わず、債権に準じて処理することができるとされています。

指数やレートに応じて決まる変動リース料は、原則としてリース開始日現在の指数又はレートに基づいてリース料を算定します。厳密には簡便法ではありませんが、これに対する例外処理として、合理的な根拠をもって将来の指数又はレートの変動を見積ることができる場合に、リース開始日にその見積りを用いてリース料及びリース負債を算定できるというものがあります。

この方法を選択した場合、決算日ごとに将来見積りを見直し、見積られた指数又はレートに基づいてリース料及びリース負債を見直すことになります。つまり、開始日時点の指数やレートを固定的に使い続けるのではなく、将来変動を織り込んだ測定を継続的に行う処理であり、経済実態により近い数値を反映しやすい一方で、見積りの管理体制が求められます。

借地権の設定に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含め、原則として借手のリース期間を耐用年数として減価償却します。ただし、旧借地権や普通借地権に関する一定のケースでは、減価償却を行わないものとして取り扱うことができます。借地に関する実務は従来から独自の商慣行や契約実態があるため、この特例は新基準への移行時にも実務上の混乱を抑える役割を持っています。

借手がリース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合には、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理することができます。これにより、当初契約の測定を全面的に修正するのではなく、再リース部分を切り出して整理できるため、契約更新時の実務を分かりやすく整理しやすくなります。店舗や事務所の賃貸借など、更新を前提としつつも当初は未確定な契約で実務上使いやすい取扱いです。

借手側の会計処理ではありませんが、サブリース取引のうち、中間的な貸手がヘッドリースに対して実質的なリスクを負わない一定の要件をすべて満たす場合には、ヘッドリースに係る使用権資産及びリース負債を計上せず、サブリースで受け取るリース料とヘッドリースで支払うリース料との差額を損益に計上することができます。本項は借手の会計処理の解説を目的としていますが、新リース会計基準における例外処理の一つとして解説しています。


新リース会計基準は借手の原則オンバランス化を求める一方で、短期リース、少額リース、利子込み法、利息の定額配分法、そして各種の簡便法や例外処理を残すことで、実務負担への配慮も行っています。自社にとって重要なのは、原則処理だけを見るのではなく、どの簡便法や例外処理を継続的に使うのかを会計方針と契約管理の両面から整理することです。本コラムが、新リース会計基準への対応を検討する際の一助となれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

当コラムの意見にあたる部分は、個人的な見解を含んでおります点にご留意ください。


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