【会計実務講座】原価計算 - 原価計算の基本的な流れ 費目別原価計算、部門別原価計算、製品別原価計算
2026年7月27日更新
上浦会計事務所
公認会計士・税理士 上浦 遼

原価計算には大きな流れがあり、原価の「集計」と「按分(専門用語で配賦)」を繰り返しながら、最終的に製品原価を計算していきます。
この流れには基本的な順番があり、一般的には「1.費目別原価計算 → 2.部門別原価計算 → 3.製品別原価計算」の順に進めることが多くなります。
本稿では、この三段階をそれぞれ順番に解説します。
1.費目別原価計算
費目別原価計算とは、原価を「どのような内容の費用か」という観点で分類・集計するプロセスをいいます。
実務では、勘定科目や補助科目を使って、材料費・労務費・経費といった費目別に原価を整理していきます。また、実務上、外注費の重要性が高い企業などはこの中に外注費という区分を設けていることもありますが、外注費は本来経費に含まれます。
費目別原価計算は、原価計算の中でも最も基本となるプロセスといえるでしょう。
(1)材料費、労務費、経費の区分
原価の代表的な分類として、「材料費」「労務費」「経費」の3つがあります。
工業簿記の基本用語としてご存じの方も多いと思いますが、実務上もこの区分は非常に重要ですので、あらためて整理しておきます。
各費目の概要は次の通りです。
- 材料費
… 製品を製造するための原材料費や、製品を梱包するたの包装資材、生産設備を動かすための燃料費等。 - 労務費
… 製品を製造するための従業員給与や賞与、雑給などの人件費。 - 経費
… 水道光熱費や減価償却費を始めとした上記以外の諸経費。
実務では、材料費・労務費・経費をさらに細かな勘定科目で管理している会社も多いと思います。
例えば材料費であれば、「主材料」「副資材」「包装資材」「燃料」などに分けることもできますし、主材料については品目ごとに管理することも可能です。
ここで重要になるのが、どの程度の細かさ(粒度)で管理するかという点です。
管理を細かくすればするほど原価は精緻になりますが、その分、仕訳や集計の工数が増えます。
「どの程度の精度で原価を把握したいか」と「原価管理にどこまでの手間を掛けられるか」を踏まえて、費目の粒度を決める必要があります。
すでに原価計算を運用している会社では、次のような視点で一度見直してみるのも有益です。
- この配賦や細分化は、本当に意思決定や管理に役立っているか
- 逆に、この部分をもう少し細かく見ないと、損益管理が粗すぎないか
「精度」と「手間」のバランスを考えることが実務では重要になります。他社の原価計算制度は自社にとって適した原価計算制度とは限りません。

(2)直接費、間接費の区分
原価は、特定の製品に直接結びつけられる「直接費」と、特定の製品に直接ひも付かない「間接費」にも区分されます。この区分も、材料費・労務費・経費と並んで非常に重要です。
- 直接費
… 特定の製品のために直接発生した原価。
例:直接材料費、直接労務費、個別製品専用の設備減価償却費、特定製品のみの外注費など。 - 間接費
… 複数の製品に共通して発生している原価。
例:間接材料費、間接労務費(工場長や工場事務員の人件費など)、工場全体の電気代や減価償却費など。
間接費のうち、製造に関するものは一般に「製造間接費」と呼ばれ、後のプロセスで一定の基準に基づいて各製品に配賦されます。
ここでも、「配賦基準の粒度」がポイントになります。
製造間接費を全部まとめて、1つの配賦基準(たとえば生産数量だけ)で配ってしまうと、計算は簡単ですが、原価の精度はどうしても落ちます。一方、すべての製造間接費について別々の配賦基準を設定すると、原価は精緻になりますが、配賦作業が過度に煩雑になる可能性があります。
例えば、次のようなイメージです。
- 減価償却費:面積や機械台数を基準に配賦
- 電気代:機械作業時間や稼働時間を基準に配賦
- 工場事務費:各部門の人員数や売上、直接費などを基準に配賦
結論として、配賦基準をどの程度細かく設定するかは、費目の重要性や求める損益管理のレベルとのバランスで決めることになります。実務上は、ある程度まとめて配賦しながら、重要な費目や金額の大きい費目だけ特別な基準を設けるといった運用もよく見られます。
なお、「材料費・労務費・経費」と「直接費・間接費」はどちらか一方だけの目線で区分すれば良いものではなく、通常は両方の切り口で原価を整理します。例えば、「直接材料費」「間接材料費」「直接労務費」「間接労務費」といった形で、費目と直接・間接の情報を組み合わせて管理するイメージです。

2.部門別原価計算
部門別原価計算とは、製造間接費などの原価を「どの部門で発生したか」という観点で集計し、必要に応じて他部門へ配賦するプロセスをいいます。
ここでいう部門とは、実際に製品を作る「製造部門」と、それを支える「補助部門(間接部門)」に大きく分かれます。
(1)製造部門と補助部門の区分
部門別原価計算を行うにあたって、まず部門を次の二つに区分します。
次に、この区分に従って原価を集計します。
補助部門に集計された費用が、いわゆる「製造間接費」として、後で製造部門へ配賦される対象になります。また、直接部門でも特定の製造に関連しない間接費は発生します。
反対に、補助部門自体は製品を直接製造しないため、原則として直接費は計上されません(基本的に間接費となります)。
また、特定の部門に紐づけにくい「部門共通費」も存在します。
例えば、工場全体の共通費用などがこれにあたります。
この部門共通費については、次のいずれかの方法で処理します。
①直接、製造部門だけに配賦する(直接配賦法)
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②補助部門も含めた全部門に一度配賦したうえで、その後、補助部門から製造部門へ再配賦する(相互配賦法 等)
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(2)会計データとの連動
ここまで見てきた「1.費目別原価計算」と「2.部門別原価計算」を行うためには、仕訳の段階からある程度情報を付けておく必要があります。
具体的には、以下のようなイメージです。
- 勘定科目や補助科目で、材料費・労務費・経費などの費目を識別する
- 部門コードなどで、どの部門の費用かを識別する
原価計算では、会計システムに蓄積されたこれらの情報をもとに、費目別・部門別に集計し、そこから配賦処理を行っていきます。したがって、「仕訳入力時にどこまで情報を持たせるか」「どの粒度まで部門・費目を使い分けるか」は、原価計算制度の設計とセットで検討しておくことが重要です。
3.製品別原価計算
製品別原価計算とは、費目別・部門別に集計された原価をもとに、最終的に製品単位で原価を計算するプロセスをいいます。原価計算の最終目的は「製品別の原価を把握すること」ですので、この製品別原価計算は原価計算のゴールにあたります。
(1)製造部門費から製品原価へ
原価計算の方法には「個別原価計算」か「総合原価計算」がありますが、いずれの方法であっても最終的には「製品ごとにいくら原価がかかったか」を求める点は共通です。
ここまでのプロセス(費目別・部門別)を経ることで、「製造部門ごとの原価」が集計されているはずです。
製造部門で複数の製品を作っている場合には、次のような流れで製品別の原価を求めていきます。
- 製品ごとに直接費(直接材料費・直接労務費など)を集計する
- 製造部門に集計された製造間接費を、配賦基準(生産量・工数・作業時間など)にもとづいて製品別に配賦する
- 1と2を合算し、必要に応じて生産数量で割ることで、製品単位あたりの原価を算定する
これらの過程を経て、製品別の原価計算表などに「各製品の原価」が算定できるようになります。
(2)「特定の製品単位」とは?
他にも実務上注意したいのは、「特定の製品単位」という表現です。
製品別原価計算というと「1個あたりの原価」をイメージしがちですが、必ずしも「1個」が原価計算の単位とは限りません。
例えば、次のようなケースがあります。
- 生産ロット単位(同一条件でまとめて生産する最小単位)
- 重量や容量単位(kg、トン、リットルなど)で販売している製品
- ガスや電力のように「個数」という概念がなじまないもの
このような場合には、「1ロットあたり」「1kgあたり」「1リットルあたり」など、自社のビジネスに合った単位で原価計算を行います。したがって、「特定の製品単位」とは、各社の実態に合わせて設定した原価計算の単位と理解するとよいでしょう。
通常の製造業であれば、「ロット単位で原価を計算し、それを数量で割って1個あたり原価を求める」という流れをイメージしていただければ問題ありません。
いずれにしても、「どの単位で原価を把握すれば、経営管理にとって一番有用か」という視点で原価計算単位を設計することが大切です。
本講座の概要をまとめた資料はこちらになります。

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